Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Les jardins à la française

たまにはベルサイユ宮殿の庭に行こうということになった。

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何もない日曜の午後の我が家では、「どうする?どこに行く?」と言い合うのが常で、概して息子は無謀なプランを出すので却下され、夫はどこでもいい派で、大抵は私が何か適当な案を出すことになるのだけれど、今日は夫が近場ではつまらないのでベルサイユにしようと言い出した。夫も息子も、なるべく遠くに遠くに行こうとする傾向があるので、見ていて面白い。たまには夫に何か提案してもらってそれに乗るのもいいなと思い、承諾する。もう午後の3時過ぎだというのに、車の後ろに息子の自転車をくくり付け、雲行きが怪しいので一応セーターと傘も持ち、急いで水筒やオヤツを用意して出発した。

 

個人的に、ヴェルサイユの街の景観は好きだ。ちょうどよい具合にこじんまりとしていて、こんな街だったら住んでもいいなと思う。友人のイザベルに言わせると、敬虔なカトリックの人達が多く住んでいて、パリに比べると格段に排他的なのだそうだけれど。

 

とにかく、かつての王様の広大な敷地に到着し、たくさんの人手の中、庭園の奥の運河の近くまで歩いて芝生の上に腰を落ち着けた。

フランス様式庭園というのは、実は私はあまり好みではない。幸いどこまでも続く巨大な菩提樹の並木が見事だけれど、もしそれがなかったら、あまりにも幾何学的で整備されていてタイクツだ。マリーアントワネットが農園ごっこをしたがる理由も解る と言うと、愛国心の強い夫は少し気に入らなかった様子で、日本庭園だって同じようなものじゃないかと反論してきた。お前はイギリス庭園派なのか?と聞かれ、そちらの方が私のタイプだと答えた。さらに言うと、イギリス庭園もなにも、草ぼうぼうの方が私は好きなのだ。

 

運河のボートを眺めながらオヤツを済ませ、芝生に寝転がって本を読もうとするけれど、一人では遊びたがらない息子に邪魔をされて読書どころではない。ママンがダメならパパ、パパがつれないのならママンにと、交互にモーションをかけて煩わしいので、とうとう私達2人揃って不機嫌になった。半分冗談のつもりで、もう帰ろうかと私が言うと、夫もそうだそうだもう帰ろうと同調して腰を上げ始めた。装っているのかと思ったら本気であるらしい。こちらも言い出した矢先引っ込みが付かず、息子はと言えばベソをかくので私達夫婦の機嫌は揃ってますます悪くなり、優雅にピクニックどころのムードではなくなってしまった。

早々にさっき広げたばかりのマットを畳み、出したばかりの荷物をかき集め、もと来た道を引き返して車に戻り、不機嫌な3人を乗せた車を走らせて、本当に家に帰ってきてしまった。

結果的に、オヤツのバナナを食べるが為だけに、遥々ベルサイユの庭園まで行ったことになる。なんて豪華で滑稽なオヤツタイム!後になるとすっかり笑い話だ。

息子は、たまに両親の気が合うとろくな事にならない という教訓を得たに違いない。私達夫婦は、いつものように意見が食い違うほうがきっと無難であるのだろう。捨てる神あれば拾う神あり のバランスのほうが良いのだ。

 

しかしまあ、ベルサイユに長居しなかったお陰で、8時に予定されていたマクロン大統領の演説が始まる前に、無事に夕飯を済ませることができた。

フランスもとうとう緊急事態宣言が解かれ、明日からカフェやレストランは再開、学校も次の週からは全面再開で出席が義務付けられるとの事。テレビ中継の大統領の背後には、エリゼ宮の美しいフランス様式庭園と噴水が映っていて、午後の滑稽な遠出をまた思い出させた。