Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le carnet de Monsieur D.

今日は息子の学校の今年度最後の登校日。

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毎年、最後の授業の日は担任の先生にささやかなカドー (cadeau / プレゼント) を贈ることにしているのだけれど、学級閉鎖や隔日登校といった変則的な状況が続いた今年は、そんな準備もすっかり忘れていた。ところが、まるでリマインダーのように朝方の夢の中に担任の先生が登場し、ハッとして目を覚ました今朝だった。朝から買い物に出られる訳でなし、プレゼントを用意するにはもう遅い。せめてメッセージカードだけでもと思い、朝食の前に息子に一筆したためさせた。それから、何かしらプレゼントできる物がありそうな気がして、戸棚やらヒキダシやらをゴソゴソ探ると、赤茶色の小さな包み紙が出てきた。中には、ちょうど良い具合に、アール・デコ調のシックな模様のカルネ (手帳) と、金の竪琴の絵の栞が入っていた。数ヶ月前にサンジェルマン・デ・プレの老舗の本屋で見付けて、いつか誰かに贈る機会があればと思って買っておいたのだ。夏休みの日本帰省でお土産になるかも知れないとなんとなく思っていたのだけれど、ウイルス騒動のせいで帰省は結局お預けになっていた。

 

息子の担任の先生というのは、リテラチュールにパッションを燃やすフランス語の先生で、本のことを語らせたらこの上なく饒舌なムッシューだ。気に入ったフレーズや思いついた事など、常に手帳を携帯してメモを取ることを生徒に勧めていた先生で、ご自身もその習慣がある様子。カルネを贈るにこれ以上最適な人はいない。そして、学年末の授業では教材にギリシャ神話を扱っていたから、竪琴の模様もピッタリだ。当てどなく先に用意しておいたささやかなプレゼントに、贈る相手が後から付いて来た。

 

このフランス語の先生、ムッシュー・ディレックは、文学の素晴らしさを生徒に伝えるのに熱心なあまり、文法の教授についてはさほど頓着しない。そのせいで、生徒の父兄の間では評価が2つに大きく分かれるようだ。私はと言うと、類稀な情熱を持つ素敵な先生だと思っている。息子も大好きな、ジョーク好きの愉快な先生だ。

 

学校から戻った息子に忘れずに渡せたかと聞くと、うんと頷き、「とっても喜んでたよ!」との返事。よかったよかった。

 

明日からいよいよ夏休みに入る。