Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le 14 juillet à Paris

今日はル・キャトーズ・ジュイエ。

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日本語で言うところのパリ祭。もしくは、フランス革命記念日。多くのフランス人にとって、夏のヴァカンスのスタートを切る指標となる祝日。

 

毎年この時期は日本に帰省していたので、今回は息子にとって初めて本国フランスで迎える le 14 juillet (ル・キャトーズ・ジュイエ) だ。朝からパパと一緒にテレビの前に陣取って、デフィレ (défilée / 行進) の様子を眺めている。コンコルド広場には、ブラスバンドの奏でる勇ましい行進曲が絶え間なく響く。例年は凄い人だかりができるのだけれど、今年は一般の観覧客が不在の、縮小版の特別なデフィレだ。

時々、行進曲に調子を合わせて夫がハミングする。私にとってはどれもこれも同じような知らない曲ばかり。と、思っていたら、急に聞き覚えのあるメロディーが流れた。確か、子供の頃に音楽教室で歌ったことがある曲だ。歌詞も一部だけ覚えている。

 

だれかが口笛ふいた 爽やかな朝だ

 

調べてみると、もともとは19世期に作曲されたフランス軍の行進曲だった (Le Régiment et Semble de Meuse)。フランス語の詞は、当時のフランス対プロイセンの戦争に向け、士気を鼓舞すべく書かれたもの。日本ではオリジナルとは全く趣向の異なる歌詞を当て、「だれかが口笛ふいた」という題で童謡として生まれ変わっていた。なんとなんと。音楽教室では、そんなこととは全く知らずに歌っていたのだけれど。

 

そう言えば、以前、息子が日本の童謡を聴いていたら、夫が「これはフランス語の歌だね」と言って驚いたことがある。多くの人がご存知の「クラリネットが壊れちゃった」という歌。オパカマラ オパカマラ オパオパオパ のリフレインは、それにしてもへんてこなオノマトペだと子供の頃思ったけれど、実はフランス語で Au pas camarade, au pas camarade, au pas au pas (進め友よ、進め友よ、進め進め) と言っているのだった。まさに目から鱗。

 

7月14日のセレモニーに話を戻そう。

例年のごとく、陸軍、海軍、戦車に警官隊に消防隊と、この時ばかりはフランス人といえどもしっかり足並みを揃えて行進は続く。今年は更に、白衣の医療従事者達が式典に加わった。よく戦ってくださいましたね という労いの拍手が長い間続いて、感慨深い彼らの表情にこちらまで胸が熱くなった。

 

それから、全く付随的な映像で個人的に印象深かったのは、エッフェル塔を素手で登る消防士達の姿だ。

フランスの消防団というのは、日本のそれと違って、実に広範囲の仕事を受け持つ「なんでも救助隊」といったところ。そんな彼らが今日という国民の祭典に際し、「火を越え山を越えビルをもよじ登って、犠牲者がどこにいようとも助けに駆け付けます」という彼らのモットーを表明すべく、パリの鉄の塔によじ登っているのだ。側から見ていてもハラハラ。怖いと思った事はありますか?と質問するインタビュアーに対して、消防士隊長らしき人は答えた。

Oui ! Il faut avoir cette peur. Sinon ça devient dangereux. 
もちろん!恐怖心は必要不可欠。それがなければ危険なのです。

 

そこへテレビの解説者がこう言葉を継ぐ。

Toujours regarder en haut, jamais en bas...
上を見続けること、決して下を見ないこと

 

ハッとするようなささやかなメッセージは、日常の色々なところに隠されている。