Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Un voyage dans le temps

川のある街が好きだ。

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街の喧騒をよそに、その真ん中をセーヌ川はとうとうと流れる。

息子を連れて河岸をそぞろ歩き、時々止まっては川を眺めながら一休み。ここからは、マリーアントワネットをはじめ、革命時代に王族が幽閉された灰色のコンシエルジュが見える。去年の春に火災にあったパリの貴婦人、象牙色のノートルダム寺院も見える。川沿いに並ぶドールハウスのようなオスマン様式のアパルトマンは、半分は窓を開け放ち、ヴァカンスに出てしまったもう半分はガラスに空を映している。そして、鉄造りの橋、石造りの橋、どれもこれも年季の入った古い橋。その上を渡る人々が、あちらからこちらに、こちらからあちらに。恋人達は立ち止まって、川面を眺めながら語らっている。この一連の眺めを目にする度に、やはり歴史のある街だなと思う。

 

ひとたび川に背を向けると、目に映るのはパリ・プラージュ (Paris plage) の賑わい。セーヌ沿いをビーチに見立てる恒例の夏のイベントだ。デッキチェアとパラソルを並べ、砂場を作ったり、ビールやホットドッグを売るスタンドがあったり。今年はそれに加えて、ウィルス感染の簡易テストを提供するスタンドまでお目見えだ。とにもかくにもなかなかの人手で、パリが廃墟の様相を呈していた日々はすでに過去のもの。車通りも元通りで、パリの空気はまた以前のように排気ガスで満ちている。

 

そしてまた川のほうに目をやると、緑の川面がとうとうと。何が起きても動揺せず、顔色も変えず、同じ調子で、先日訪れたノルマンディーの方向に、急がず、立ち止まらず、流れて行く。時の流れのようだなと思う。それを眺めていると、どうして私はここに居るのだろう とふと思う。この時代の、この場所に、この姿をして。

 

ゆく河の流れは絶えずして 

しかももとの水にあらず

 

長明さんはよく言い得たものだ。