Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Pas grandes choses mais...

1日の終わりに

これといった出来事のない今日の日のあれこれ

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昨晩、洗濯物を畳みながらラジオを聞いていたら、フランスの風水の第一人者を名乗る女性のトークが流れた。風水といえば、私は日本にちょっとした専門家の素敵な友人がいる。フランス人の風水専門家というのは一体どんな話をするのだろう?と、興味津々で耳を傾けた。

 

至極簡単に言うと、「物をどう片付けるか」という流行りのテーマだった。「例えば貴方の部屋が物凄く散らかっているとしたら、それが何かを引き起こすコーズ( 原因 / cause) になるのではなく、それは貴方の現状のコンセコンス ( 結果 / conséquence) なのです。」ふむふむ。結局どちらでも同じような気もするけれど。

各部屋のそれぞれのキャラクテール (caractère / 性格) についても語り、同じ役割を担っているようでも、地下にあるカーブと屋根裏の物置とでは意味合いが全く違うのだ なんていう話も、フランスらしくて面白かった。カーブは暗くて寒くて湿っぽくて、誰も好んで足を運びたがらない物置なので、忘れ去られようとする過去の場所なのだと。かたや、屋根裏の物置というのは、そこに大事な思い出の品を見つけたり、宝探しの気分が伴って、見付けて欲しがっている思い出の置き場所なのだと。だからその2つの物置の間には、過去と未来の差があるのだと。すっかり聞き入った。

話は更に続く。「もし貴方の家に、なんでも物を押し込めて隠してある部屋があるとしたら、貴方の生活に滞りがあるということです。」ギクリ。

 

それにしても東洋が西洋を受け入れ、西洋が東洋を受け入れるのは素敵なことだ。フランスの風水は、本番の中国風にフィングスゥイとかなんとか呼ばれていて、私には発音的に難易度が高くて困ってしまうのだけれど。

 

そういった訳で、久々に1人になった翌日の今日は、さっそく家中の大掃除と片付けに手を付けた。どのみち新学期なので着手しようと思っていたところ。ちょうど良い弾みが付いたというもの。

そして、今日はここまでという時点まで「働いた」ところで、ちょうど息子の学校のお迎えの時間が来た。

 

息子あたりの年齢になると、フランスでも学校くらいは一人で行き来し始める子供が多いけれど、我が家の息子の場合は諸事情あって、週に2日ほど送り迎えしている。

早めに着いたので向かいのカフェで待ち時間を潰していると、斜め向かいの席に高齢のマダムがやってきて腰を降した。何がどうとは言い難いのだけれど、独特の雰囲気がある人だ。何も言わずに座っているけれど、何やら言いたい事がたくさんありそうな顔をしている。服装は正しく、行儀も良く、表情も極めて普通なのだけれど、どこか何かしらに不満がありそうな程だ。カフェのマスターである太っちょの女性が注文を取りにやって来て、「ボンジュール、プランセス!」と挨拶する。粋なサービス精神だ。常連客であるらしい。お年を召したお姫様は、おしとやかにフリット (フライドポテト) 付きムール貝を注文する。夕方の4時にムール貝とは、遅い昼ご飯だろうか、早めの夕ご飯だろうか。そしてテーブルに運ばれた山盛りのムールとフリットを摘みながら、明らかに私の様子を伺っている風だ。話を聞いてくれる相手を探しているのだろうか。この手のお姫様に下手に捕まると後が長いので、落ち着かず、私は席を立った。

 

人が発するオーラというものは明らかに存在すると思う。家が発する「気」というのも明らかに存在する。他人が見たとき、私はどんなオーラを発しているのだろう。ママンになってからというもの、疲れたような顔をして、まともな気を放っていない事の方が多い気がする。人の振り見て我が振り直せ。もう少し気を付けようと思った。

 

学校から出てきた息子に今日はどうだった?と聞くと、「初めてエスパ二ヨールの授業があったよ」とのこと。第二外国語のスペイン語の事だ。今まで、曲がりなりにも息子の宿題や勉強の面倒をみてきたけれど、エスパ二ヨールとなると私にはお手上げだ。「そればっかりは面倒見みれませんからね。逆にママに教えてね」と、先に放棄宣言しておいた。先を越されることが今後どんどん増えていくのかしら。それは頼もしいこと。まだ幼顔の息子の横顔をチラッと盗み見た。

 

家に着いてドアを開けた瞬間、滞りなく正常な、そして清浄な空気が流れ出てきた。そういえば昼間に大掃除したんだっけ。やっぱり「気」は明らかに存在するのだと再認識した瞬間だった。

 

夜。カイシャから帰った夫は、家の中が今朝より片付いていることに殊更気が付いた風でもないけれど、何を思ったのか「この週末、テアトルにでも行く?」と提案してきた。彼からお芝居を見に行こうと誘うのは、非常に珍しいこと。多分これが初めて。家の中をリセットした事は、何かしらのコンセコンスではなく、何かを導くコーズになり得るのではないかしら?と思ったのだった。