Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Dernière sortie avant l’hivernage

ふらりと出た午後の散歩で偶然行き当たったのは、バルザックの家。

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息子の2週間の秋休みが幕を閉じようとしている。それと入れ替わりに、昨夜の大統領の演説で、フランスは再度ロックダウン体制に入ることが明らかになった。明日の金曜から、言うなれば今度は少し早めの冬籠り。だから今日の散歩は最後の遠出という訳だ。

 

青い目をじっとカメラに据えて、マクロン大統領は昨夜の演説で述べていた。集団免疫ができるまで待つ策を提案する専門家もいれども、これ以上犠牲者が出るのを何もせずに放っておくわけにはいかないのです と。これぞヒューマニズムだなと思った。

 

2週間ずっと毎日息子の24時間を過ごし、私の1日はゼロ時間。寒さが到来し、雨が続き、日が暮れるのも早いので夕方気が付いた時には外は真っ暗。おまけにテレビやラジオでニュースを聞けば呆れるほど暗い事件ばかり。もう慣れっこになったはずのパリのグレーの空だけれど、さすがに鬱憤が溜まり、過ぎたる水曜は、晴れ間が出た瞬間にほとんど無理やり息子を連れて公園に繰り出した。

そろそろ公園には足の向かなくなってきた彼だ。つられて私も足が遠のいていたけれど、秋の公園の木々は果たして美しく鮮やかだった。雨に打たれてより一層艶やかな紅葉。これが全て散ってしまう前に来てよかった、とつくづく思う。赤や黄色のきれいな落ち葉を拾い、冬の到来前の最後の花を集め、まだ今のうちは青い草を摘み、時々写真を撮ってカバンに納め、そうこうしているうちに不思議なくらい憂さがすっかり晴れていた。

 

自然の中に身を置くと心が落ち着く理由の一つはきっと、そこに揺るぎない秩序があるからだと思う。例え人間が様々なことで大騒ぎしていても、それをよそにして季節のサイクルはただただ巡る。そのつつがなき営みを目にできる限り、元気になれる気がする。

 

その一方で自然は優しいばかりではない。パワーを満たしてくれる反面、自然界は弱肉強食の世界でもある。弱者は容赦なくふるい落とされる。か弱きものを庇い、衰えたものを守ろうとするのは、ネイチャーではなくヒューマンなのだ。ヒューマニズムには、自然とはまた別の種類の理と美があるのだと思う。

とにもかくにも、冬籠り前の最後の散歩は図らずもメゾン・ド・バルザックが終点となった。薄暗い書斎とその机には文豪の気配が今も漂っていた。

「コンフィヌモン (confinement / ロックダウン) だって?上等じゃないか。ひと作品書くのにもってこいだ!」

そんな氏の呟きが聞こえる気がした。