Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Meilleur cadeau

今日は洋服ダンスの奥や本棚の上に忍ばせておいたカドー (cadeaux プレゼント) が日の目を見る日だ。

 

f:id:Mihoy:20210114214649j:image

 

朝、夫はボンジュルネと言って久々にカイシャに、息子は行ってきますと言って学校に、次々と出掛けて行った。

台所のカウンターの上の後片付けをしていると、息子の残したプチデジュネのお皿の上に、クレモンティーヌ(蜜柑) の黄色い皮に混ざって丸くてきれいな種がいくつも並んでいるのに気が付いた。こんなにたくさん形の良い種が出るのは珍しい。今朝の蜜柑は当たりクジだ。そうだ、今日という日の記念にこれを植えてみようと思いついた。我ながら素敵な思い付きだ。思いもよらぬ息子からの2つ目のプレゼントということにしよう。

 

そんな息子は昨晩、宿題を自分からまったく手に付けようとしない事を怒られて、ふてくされて早寝した。珍しく自分から起きた今朝は、まだ昨日の気分がすっかりリセットされていない様子で、可愛らしく寄ってきておはようの挨拶などせずにむっつりしている。パジャマのままテーブルで暫く何やら紙に色ペンで書き付けているかと思えば、まるで学校の先生の机の上に遅れて提出物を出すかのように、バツが悪そうに黙って台所のカウンターにその紙を載せた。

チラリと目をやると、相変わらず下手ッピな筆遣いでかわいいネコの潰れ気味な顔の絵があり、maman と示してある。その下には赤く塗りつぶした水玉模様が3つ並んでいて、それぞれに緑色の棒が付いている。その棒付きキャンディーのようなものには矢印を付けて rose と補説が付いていた。

思わず笑い出しそうになるのを堪え、補説に気がつかなかったフリをして、わぁ、美味しそうなボンボン( bonbons キャンディー) が3つも!と言うと、憤慨したように「ちがうよ!バラだよ!」と、今朝になって初めて口を開いた。知ってますよ。これで笑って昨日の一件は水に流し仲直りした。紙を裏返すと大きくBon anniversaire ! と書いてある。目尻がうんと下がる。ギュッと抱き寄せてようやくの朝の挨拶の後、嬉しい誕生日メッセージへのありがとうを伝えた。

 

時々、何かのついでに予定していなかったちょっとした買い物をした時など、それをプレゼント用に包んで貰って家に帰ってタンスの中などに隠しておく。ちょうど良い潮時が来たら取り出す。あるいは、すっかり忘れた頃に向こうから出てくる事もある。自分へのちょっとした贈りものだ。家族への贈り物の場合もある。中身は本である事が多い。綺麗な絵柄のノートだったりロウソクや石鹸だったりすることもあるけれど、大したことのないものの方がより時の洗礼の効果を受けて楽しい。

 

今日という日の1番贅沢な贈り物は、偶然にも久々に得たひとり静かな時間だ。昼時にご飯を用意する必要もない。

息子の愛らしい絵を飾り、温かいお茶を淹れ、隠しておいた自分へのちょっとした贈り物を宝探しのように見付け出してきてテーブルの上に載せる。中身が何の本であるのかは、忘れる努力をしたにも関わらず残念ながらしっかり覚えている。いつかもっとずっと歳を重ねて、100歳のおばあちゃんになって記憶が定かでなくなったら、この自分への贈り物ごっこはもっと楽しくなるかもしれないな なんて思ったりする。