Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Heure dorée

金色の朝

 

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どうした星の巡りあわせなのか、インスピレーションが渾々と湧きあがる朝がある。

 

前日のメテオは悲観的に雨を告げていたのに、夜が明けてみると、黄金色の太陽が天からの贈り物のように光り輝く朝。そんな日に起こることが多い。グラスに注いだシャンパンの、幾千もの泡が微かな音をたてて盛んに湧き上がるように、惜しげもなく次々と「ヒント」が湧く。まさに、金色の時間。

 

目に映るもの、耳に入るもの、どこからともなく浮かんでくるもの、何を偶然手に取ってみても、貴重なメッセージが仕掛けられているから、まったく忙しくて困ってしまう。嬉しい悲鳴だ。その上、ひょんな偶然まで続いたりもする。

ソファーの周りを掃除がてら、偶然手に取って開いた本のページに、ちょうど欲しい情報が載っていて目を見張ったり (cuire de russe)、とある歴史的人物に最近非常に惹かれていて、ぼんやりその人物やその時代のことを考えながらラジオを点けら、途端にその名前が流れてきたり(Christine de Pizan)。小粒の宝石が散りばめられたような貴重な朝だ。

 

その、インスピレーションと呼べそうなものは、私の意思に関係なく勝手にどこからともなく降ってくる。雪や雨、あるいは光のように。

それなので、朝食の食器を洗っては、急いで手を拭いてカルネ(手帳)に書き留め、ラジオに耳を傾けてはハッとして、台所の壁に掛けてある黒いドレスのマドレーヌと目が合っては、そのメッセージを受け取り、冷蔵庫を開けて昼食の材料を出しては、また一つ素敵な事を思いつく。ただえさえ忙しい朝だというのに、別の日、別のタイミングを選んでやって来てはくれない。今朝は美しく珍しい蝶々がヒラヒラたくさん舞っていて、それを捕まえるのに忙しくて、仕事(家事)に手がつかない。そんな具合だ。

人にどう言い訳すればいいというのか。テレワークの書斎から時々出てくる夫に、うつつを抜かしていると怪訝に思われても不思議はない。

 

どういう仕組みで「今朝」という時間が選ばれてそんな現象が起こっているのか、分からないけれど、心の葛藤もあって忙しい朝だ。済ませるべき家事と昼食の準備に心を徹して遂行するべきか、そんなものは放り出して机に向かうべきか、それとも、こんな日は家を飛び出して、更なるインスピレーションを追い求めて心の向く場所に出向いてみるべきなのか。さて、どれを取る?

 

そんな時、せめてその断片を書き留めておくための紙とペン、そして文字というものがあることに感謝する。あとは、集めたものを結晶化する塊の時間が欲しい。

 

ああ、もうお昼の時間!

そんな時に限って、料理されるのを待っている食材は、ちりめんキャベツ。すべすべのお肌のキャベツなんかに比べて、煮えるのによっぽど時間がかかる。それなのに、もうすぐお腹を空かせた夫のお昼ご飯の時間なのだ。