5月1日

夕暮れ時、久々にザーッと大雨が降った。
晴天続きでテラスの植物がすっかりカラカラに乾いていたから、恵みの雨だ。それも夕食前にはキリよくサッとあがって、窓を開けると雨に打たれた草木の青臭い匂いがする。隣人の庭の桜の木は、葉蔭にもう小さな緑色の実をたくさん光らせている。薔薇もアイリスも約束を待たずにもう花盛り。5月はこれからだというのに。
今夜はちょうど満月だそう。そして今月末にもう一度満月を迎えるそう。満月を2つも持つ5月だなんて素敵だ。
ふと目にした Vogue の記事に、満月に願い事をしましょうというようなタイトルが載っていた。2度の満月の1度目の今夜は「自分にとって何が今最も重要で、何を手放すべきなのか見極めるとよいでしょう」。2度目の満月は「必要のないものを手放した後、何を新たに手に入れたいか考えるとよいでしょう」と。ふむふむ。
さて、私にとって今一番重要な事はなんだろう。温めている小さなプロジェクトが軌道に載ること?今の私が何か一つ願い事をするなら、それはどんな事?
この機会に今夜はちょっとそんな事を考えてみようかしら。寝る前の息子の頬におやすみなさいのキスをして、1人になってから考えようと思ったその瞬間、ハッと閃いた。なぁんだ、そんなの決まってるじゃない!1人になって考える必要なんてないのだ。私にとって今一番重要なのは、私の事ではないのだから。この子のことなのだから。
明日は息子とその親友を連れ、列車に乗って中世の面影が残る薔薇の町へ行く。
連休中、一緒にどこかに遠征しようとずっと前から約束していて、どこがいい?と訊くと、意外にも「プロヴァン」と答えが返ってきたのだ。歴史にも薔薇にも興味のない彼らが、なぜプロヴァンなのかと尋ねると、息子の親友いわく「去年一緒に行った時の写真が良い思い出になっているから」とのこと。
ちょうど去年の今頃に思い付きで出かけて、夏日だったのでアイスクリームを食べて、城壁の外の草原で寝転がって、彼らが全く興味を示さない小さなバラ園を覗いただけで帰った遠足で、ことさら気に入っていたような様子もなかったのに。その上帰りの電車がずいぶん遅れて、何にもないタイクツな駅で散々待たされたというのに。さては、あの古い町がこっそり彼らに魔法をかけたのかな?
とにもかくにも、ちょうど薔薇の気になる私が5月にぜひ足を運びたいと思っていた町だから、まさか彼らの口からその名が挙がろうとは思っていなかったから、この不思議な以心伝心に大喜びした。息子よ、君は良い友を持ったものだ。
今日は雨。天気予報によると明後日から一週間ずっと雨。ところが、明日だけちょうどポッカリ穴が空いたように曇り印が付いている。まさにおあつらえ向きの遠足日和という訳だ。それもこれも、やっぱりあの中世の薔薇香る町の魔法なのかな?そして、今、ふと見上げた雨上がりの空に満月が美しく輝いている。





