Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Entries from 2020-05-01 to 1 month

Le progrès

夜のソファーでひとり静かに読書していた。 と、書斎のドアがスッと開いて夫が出てきた。 例によって冷蔵庫に直行するかと思いきや、目の前に来て、本人に似つかわしくない甲高い声で Regarde ! (見て!) と言う。見ると白い花の小さな束を手にしている。我…

Mon village

かたく泡立てたメレンゲのような雲が浮かぶ夏日。 夕刻に近所に散歩に出ると、必ずと言ってもいいほど知っている誰かに会う。 お篭り生活の反動と、爽やかに晴れた夏日であるので、太陽が少し和らいだ時間帯に皆んなこぞって外に飛び出すのだ。この界隈に住…

Les pivoines

買い物の道すがら見かけたピボワンヌ (牡丹)にほっと心が緩む。 日々の息子の家庭教師役に懲り懲りして、夕方、買い物カゴを引っ掴んで家を飛び出した。 勉強なんて、自分でやらないうちは意味がない。嫌がる事を無理やりやらせる役目なんてまっぴら御免だ。…

Les conquêtes amoureuses

木曜から続いた4連休。今日は最後の日曜日。 約束の12時半に、夫の友人ヴィージルはワインボトルを片手に我が家にやって来た。パリのど真ん中、サンシュルピス教会の目と鼻の先に住んでいる彼だけれど、サングラスをTシャツの首元に引っ掛けて、まるでヴァカ…

Les fraises de minuit

これは夜中のイチゴ。 いつものように夜の台所を片付けて、少し本を読んで、メールをチェックしていたら、あっという間に夜中になった。 明日は2ヶ月半ぶりの来客がある。夫の学生時代からの友人がお昼にやって来る。ベランダでランチの予定だ。新鮮な空気と…

Le temps des cerises

今年もさくらんぼの実る頃となった。 季節をいただく幸せ。 フランスの良いところは、農業大国であるから、野菜果物がふんだんにあるところ。今は、さくらんぼと苺、それにアブリコ (abricot / 杏)が店々の軒先に可愛らしく並ぶ季節だ。 サクランボで思い出…

40

今日は祝日。 キリストの昇天祭 (L'Ascension) 。復活祭の40日後に当たる。 十字架に架けられたキリストは、甦って使徒の前に姿を現す。それを祝うのが復活祭。けれども、その40日後には地上を後にして昇天してしまう。それが今日という日、昇天祭。いよいよ…

Paris sans café

結局、往復で 12Km も歩いた。 昼下がりに、息子の歯列矯正のドクターとランデブー (約束) があった。いつもならメトロで行くところを、もともと薄暗くて清潔とは言い難い上、この騒動と来ては息子を連れて乗る気にならず、天気も良いので歩くことにした。片…

Ma lecture parallèle

注文していた本が届いた。 デンマークに旅行に行った友人に勧めてもらった、ご当地式の小さな幸せ作りについての本。表紙を眺めただけで、すでにほんわりと幸せな気分。友に感謝。 たとえ世の中が騒々しくても、気に入った本を一冊持って落ち着く場所に避難…

Daphné

さんぽの途中、人様のお庭のバラをパシャリ。 もう時期は過ぎたと思っていたけれど、まだ美しい盛りのバラも時々見かける。日本の庭に椿が咲くように、フランスの庭にはバラがよく咲いている。 息子のギリシャ神話の本を読んでいて、ローリエ (月桂樹) はダ…

Métamorphose d’Ovide

世の中はどうなってゆくのだろう。 今日も見事な五月晴れ。 こうも毎日気候がよいと、お日様の光で警戒心なんてすっかり溶けてしまいそうだ。「北風と太陽」の話を思い出す。引き続き充分警戒するようにと厳かに促されても、ぽかぽか陽気には降参だ。コート…

Ma chère petite rose sauvage

野ばらが咲いた。 J'ai une toute petite rose sauvage dans mon balcon. Juste une. Un cadeau du vent. Ou d'un oiseau. Le monde se renouvelle sans que je m'en soucie. La vie est tellement belle. 我が家のベランダの無法地帯に、風が種を運んできた…

Jimmy, le pie

健やかな晴天の日が続く。 朝、居間の窓の外を眺めると、カケスが一羽芝生の上を散歩していた。 お馴染みの黒と白のツートーンカラー。でもよく見ると、翼の一部は美しい藍色をしている。いかにも物思いに耽っている様子で、地面を眺めながらひと足ふた足進…

Le rapporteur voyageur

旅する分度器のはなし それは4年くらい前のこと。 友人マリンに、日本の “エケー” と “ハポルター” を買ってきてもらえない?と頼まれた。 エケーって?ハポルターとは?聞いたことのないオブジェだと思ったら、何のことはない三角定規 (équerre) と分度器 (…

Les pivoines jaunes

今日の覚書き アパルトマンの下のところで、お向かいさんのヴェロニックに会った。 この頃どう?と聞くと、ロックダウンが解除された日々は、意外にロックダウン中よりもコンプリケ (compliqué / 複雑) だという返事が返ってきた。家に篭っているうちは、息…

Une nouvelle routine

今日から、毎朝バゲットを買いに行くのを日課にしよう。 お天気が良ければの話だけれど。 息子の「おうちの学校」を始める前の、ちょうどいい運動になる。 近所には、幸運なことに美味しいパンを焼くブーランジュリーが3件ある。アパルトマンの門を出て、ま…

Le monde selon Michel

いわゆるトンネルから抜けた1日目。 もちろん、世界は昨日に比べて一見何の変化もない。 夫はマスクと消毒ジェルを持って2ヶ月ぶりにカイシャに出向いたけれど、息子の学校は相変わらず閉鎖中であるし、宿題は相変わらず次々に送られて来る。窓から見える閑…

Merci à vous

日本の今日は母の日。 遅ればせながら、 お世話になった方々に、 母のような、姉のような、私の親愛なる方々に、 たくさんの感謝を込めて、 5月の薔薇を。 どうぞお元気でお過ごし下さい。 またすぐにお会いできますように。

Les français et les masques

フランス人とマスクについて。 フランスは明日で一旦現在のロックダウンが解除される。 長い長い春の冬籠りの終結、と言いたいところだけれど、実際には、今までとあまり変わらない生活スタイルがしばらく続きそうだ。変わることといえば、外出する時に許可…

Les spaghettis troués

穴あきスパゲティーのはなし 毎日毎日3食作るっていると、なんだかご飯とご飯の間を生きているような気がしてくる。生きるためにご飯を食べるのか、ご飯を食べるために生きているのか。歩く胃袋、息子を見ていると、その両方なんだろうなと思うけれど。 冷蔵…

Le couché de soleil rose

だいぶ日が伸びた。 今日の日没の時刻は21時過ぎ。 ソファーで息子に本を読んでやっていると、窓から見える西の空がハッとするほど濃いピンクに染まっていた。本を置いて窓辺に行き、きれいな色の空をしばらく一緒に眺めた。それからまたソファーに戻り、続…

L’amoureuse

キャロリーヌは恋をしている。 私より確か4つくらい年上で、育ちがよく、学もあり、それでいてどこかポップでロックなムードがある。小柄な細い体に端正なちいっちゃな頭を乗せている。青眼の美しい人だ。私の良き友でもある。 キャロリーヌの恋は、彼女の現…

La pleine lune

夜中にひとり居間でメールを打っていた。 伯母宛に、私の母が好きだったクラシック音楽について書いていたら、窓からいつになく大きな月が覗いているのに気が付いた。 満月かしらん。 La lune 月のフランス語は女性形。 お母さん、さっきからずっとそこで覗…

Le cocon et le papillon

繭と蝶のはなし。 ロックダウン生活に入る前、道で転んでケガをした。 薄暗い夕方、乗ろうとしていたバスの時間に遅れそうで、携帯電話を片手に画面の時刻に気を取られながら、慌てて道を横切ろうとしたら、視界に入っていなかった道のヘリに躓いた。そそっ…

Pomme d’au revoir

わたしは真っ赤な林檎です お国は寒い北の国 5月になっても「寒の戻り」と呼べるのだろうか。 パリはここのところ肌寒い日が続く。仕舞いかけたセーターを出して羽織る。 本格的に暖かい季節を迎える前に、息子と一緒に季節はずれの焼きリンゴを作った。 で…

Bienvenu au club de miel

こどもの朝食にビーポーレン (花粉) を勧められた。 滋養があるらしい。 勧めてくれたのは、お料理上手のソニア。雑誌に料理やファッションや健康に関する記事を書く仕事をしているので、私の知らない色々な事に詳しい。彼女の家では、ヨーグルトにパラパラ…

Le petit concert

パリの5月の夜8時はまだ明るい。 窓辺に人々が姿を現し、しばし街中に拍手喝采が巻き起こる時間だ。 ロックダウンが功を奏し、病院のベッドを必要とする感染患者数はようやく半減したけれど、医療に携わる人達の闘いはまだまだ続く。8時の拍手喝采はそうした…

La suite

昨日の話には続きがある。 買い物を済ませ、帰り道の坂道で立ち止まって街路樹の新緑を眺めていると、 Excusez-moi Madame ! と背後から声がかかった。 振り返ると、道路を挟んだ向こう側に、分厚いウールのカーディガンを羽織ったお爺さんが立っている。こ…

L’art de la répartie

冷蔵庫が空っぽになったので買い物に出た。 天気の良い土曜日。 ロックダウン中とはいえ、晴れた日はやはり雨の日よりも人手が多い。散歩や運動が目的の外出の場合、自宅より半径1キロメートルまでと決められているけれど、生活必需品の買い物であれば距離は…

Le muguet

すずらんを手に入れし。 心うれし。 朝方、眠い目をこすりこすり起き上がると、友人ソニアからSMSが届いた。 愛らしいスズラン(muguet ミュゲ) の絵の入った詩のようなメッセージだった。 En ce premier jour de mai, Reçois ce brin de muguet. Qu'il ensol…