Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

L’atelier de la rue de Paradis

友人で画家のアデルのアトリエに、初めて遊びに行った。

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その名も rue de paradis, パラダイスと名のついた通りにあった。

 

ホモセクシュアルのサイコテラピストの寝ぐら 兼、現場に出ていてほとんど姿を現さない建築家のオフィス 兼、墨絵とコラージュを表現手段とするアデルのアトリエ、つまり全くタイプも性別も(?)違う3人がシェアする共用アパートメントだ。

 

「他の2人は昼間はほとんど留守だから、1人で制作に没頭できるの」と、アデルの言。

 

サイコテラピストは週末だけ(ウィークデーは恋人の所に寝泊りしているから)、建築家は夕方だけ、そしてアデルは日中だけ、このアパートで時間を過ごす といった具合だ。

 

 

バスルームも兼ねた洗面所には、バービー人形サイズの、筋肉隆々で日焼けした男性の人形が、仲良く2つ並べて飾ってある。

そのうちの1つの頭には、目口鼻の描かれたトレペの芯が、お面のように被せてある。

サイコテラピスト君の茶目っ気なのね と苦笑する。

 

 

共用キッチンを覗くと、

コンロの上には年季の入った笛吹きケトル、天井には古いシャンデリアがぶら下がり、アンニュイな色合いのブルーグレーの壁には、額に入った絵なんかの代わりに、絵の具のたくさん付いたパレットがオブジェとして掛けてあり、食器のほとんど無い食器棚には、文庫本がずらりと並ぶ。

 

その中に、Georges Perec の本を見つける。

フランスに来たばかりの頃、強烈に読みたいと思っていた本のうちの一冊だけれど、当時は歯が立たなかった。

今なら、この作家独特の、めくるめく描写表現の世界に入り込むことができるかも。

 

「ぺレックは好きな作家だけれど、あまりに描写が細かすぎて時々うんざりすることもある」とアデルは笑う。

 

ひとしきり、好きな作家や本の話で盛り上がり、幻想的な作風の、アデルの一連の絵を眺め、今回もあっという間に時間が過ぎた。

 

 

家はそこに住む人を表す というけれど、普段顔を合わせることのない3人の共用アパートメントは、ちょっと不思議な空間だった。