Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le papillon de mercredi

今日は水曜日。

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昨日も今日も一歩も家から外に出なかった。

毎日家に篭りきりで、その上これとて特別なイベントも無いとなると、今日が何曜日なのかだんだん判らなくなってくる。月曜日は火曜日に至極似ているし、水曜日は木曜や金曜となんら変わりない。夫のテレワークが無い土日だけ、辛うじて区別が付くといった塩梅だ。

 

今日、水曜日は、息子の歯列矯正器のサイズ調整をする日。敢えて言うならば、それだけがウィークデーの真ん中を示す囁やかな縦軸になっている。

 

大抵のフランスの子供達は、個人差はあるけれど、早ければ9才くらいから歯列矯正を始める。お年頃のティーンエイジャーにもなるとそのパーセンテージはぐっと上がり、矯正器は、イチゴ味のファーストキッスに要らぬ金属味を添える邪魔もの、かつ青春のシンボルとなる。

 

典型的な現代っ子で口内の空間が狭い我が息子は、9才の時点で、歯列矯正のために上下2本ずつ計4本の乳歯を抜くように勧められた。

学校を早退させ、悲嘆する息子をなだめなだめドンティスト (dentiste / 歯医者) に連れて行った日を覚えている。ママンも全く気が進まず憂鬱だった。診察室になんとか引っ張り込んだはいいけれど、怖がりの彼はベソをかいてなかなか椅子に座ろうとしない。散々揉めた末にようやくなんとか抜歯を済ませ、ドクターからご褒美にプラスチックのチープなミニカーを貰い、そんな物で可愛いらしくもなんとか涙が乾き、家に帰ると電池が切れたようにソファーに倒れ込んでそのまま朝まで眠り込んでしまった。苦い思い出だ。

 

ところがその後、経過を見せに再度かかりつけのオートドンティスト (orthodentiste /歯列矯正医) の所に行くと、バービー人形よろしく金髪でスタイル抜群のドクターは、ゆくゆくはもう4本抜きましょうと言う。まるで畑の人参を抜きましょうとでも言っているような具合だ。

もう出っ歯でも空きっ歯でも構うもんか とヤケになりかけたけれど、ふと、ひょっとしたらもっと違うメソッドが存在するのではないかと考えた。

 

そして、その気になって当たれば出てくるものである。抜歯を一切行わずに歯列を矯正する、知名度は低いけれど効果的な自然派メソッドを探し当てた。

 

そんな訳で、

息子の歯列矯正器は、歯の表面に当てる金属製のレールタイプではなく、レジン製で口蓋に当てるタイプのもの。半透明のグミキャンディーのような色合いで、蝶のような形をしている。着用すると多少発音の邪魔にはなるけれど、食事の時などは取り外せる。週に一度、中央にある小さな穴に針金を差し込んでサイズを広げる。内側から歯の根本を押して口蓋を少しずつ広げていく仕組みなのだ。

 

新しい息子のオートドンティスト、マダム・フーニエは、遠視用メガネ越しに巨大化した両目を瞬かせ、褐色のボブカットの髪には白いものが混じり、待合室に患者が何人待っていようとも、一人ひとりにじっくり時間をかけて向き合ってくださる素敵なドクターだ。