Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Les iris

もうすぐ5月。

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バルコニーのアイリス (iris / 菖) が綺麗に咲いた。

外出を制限されている間に春が来て、桜が咲いて、散って、そしてもうすぐ初夏がやって来ようとしている。

 

朝、買い物に出ると、ブーランジェリー(パン屋)に長い長い行列ができていた。今日は日曜日で、近所に3軒あるうちの2軒は閉まっているので、残る1軒は大盛況なのだ。

 

食糧難が起こるかも知れないという噂が流れると、日本では皆急いでお米を買いに走るけれど、フランスで買い占めの対象になるのは小麦粉(パン)とパスタだ。日本の米一揆だって、フランス版は「パンを求めてレボリューション」とった具合。

 

今回のパンデミック騒動が始まったばかりの頃、スーパーのパスタコーナーはこぞって空っぽにになった。ブーランジェリーのパンがウィルス感染の媒体になるか否か?が大きく取り上げられたりもした。各国の主食は、これだけ国際化が進んだ現代の都会でもしっかり健在している。フランス人はやっぱりフランス人。

 

昨日友人と電話で話していたら、ロックダウン期間中、毎日パンを買いに出なくてもいいように小麦粉を入手しようとしたけれど、どこに行っても品切れで閉口したと話していた。「小麦粉、どうしてる?」と聞かれ、我が家では小麦粉は必需品ではないので無くても問題ないのだと答えると、彼女は目から鱗が落ちた様子だった。そう、私はバゲット (棒状のパン) の国の人ではなく、お箸 ( baguette / 箸も棒なのでフランス語では「バゲット」と呼ぶ) の国の人なのだ。

お米の棚が軒並み空っぽになったら流石に少々閉口するかも知れないけれど、昔から雑食派の私は、食べる物が手に入りさえすれば、何であっても取り敢えず平気なほうである。

 

昼食は夫が bar (スズキ) のカレーを作った。

喋りながら口に運んでいたら、うっかり小骨を飲み込んでしまった。

魚の小骨が喉につかえた場合、フランスで巷に知られる対処法は「パンドゥミ (pain de mie / 食パン) を一口食べ、水を飲んで流す」のだそうだ。

日本ではどうなの?おにぎりを一口食べてお茶で流すとか?と冗談混じりに夫が訊く。そう言えば、そういったケースの対処法は特に日本で聞いた覚えがない。

 

魚好きな日本国民は、そもそも小骨を喉につかえたりなんて不器用なことはしないのだ、そんなことをしようものなら島国の人間の恥なのだ、だから民間療法も存在しないのだ と、真相はともかく、もっともらしく答えておいた。私が小骨を飲み込んだのは、フランス滞在が長くて日本人離れし始めている証に違いない。Oh là là ! どうしよう、私のアイデンティティーが危ないんだわ!と危機感を装って見せた。むろん夫はそんな一連を笑って聞いている。

実際のところは、箸に比べてナイフとフォークでは魚の小骨が取り辛いというだけの事なのだ。

 

 

お隣の国スペインでは、6週間の厳格な完全ロックダウンが行われたようだ。リベルテを国のモットーの一つに掲げるフランスでは、国民の精神的な負担を考慮して懐柔案が採られた。買い物や運動のための外出は、許可書を一筆したためて持参さえすれば許可されている。そんな外出制限期間も、予定では残すところあと2週間。

 

その後、どんな世の中が私達を待ち受けているのか、今のところ未来は誰にも判らない。

逆に言えば、どんな風にだって想像(創造)できる という事かも知れない。

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