Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Dame Normande

静かなノエル

 

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家族でひっそり過ごしたイヴの翌日。

食べ過ぎた晩の次の日は、なんにもしないで過ごす。つい最近パリの街を歩いていて偶然耳にしたビル・エヴァンスのピアノとジム・ハールのギターという組み合わせのジャズがすっかり気に入り、これを一日中繰り返し流している。すこぶる心地が良い。食べ物は冷蔵庫に昨日の残りがまだたっぷりある。息子はプレゼントに受け取ったラジコンを試したりレゴを組み立てるのに忙しい。部屋は暖かく、家族は健康。それだけで幸せだ。

寒くて厳しい冬という季節が好きになれる人は、恵まれた幸せな人なのだと思う。

 

半月ほど前、ノエルに贈る家族へのプレゼントを探して歩いていて、ふと足を踏み入れたブティックに飾られていたテーブルベルに一目惚れした。ノルマンディーのどこかの家庭で昔使われていた伝統的なオブジェだという。地方独特の古風な衣装を纏い、肩にはストールを羽織り、両腕を腰に当て、ちょっと怒っている様子のママンの姿をした極小さな卓上ベルだ。ノルマンディーの肝っ玉母さんといったところ。いかにも、「ア・ターブル (ご飯ですよ) って何度呼んだら来てくれるの!」と言っているようで、一人クスリと笑ってしまった。手に取って振ってみると音色もいい。

それにしても、趣味の良いそのブティックは、美しくクラシカルなムードの品々が博物館のように並んでいて目を楽しませてくれるのだけれど、品物をひっくり返して値段をみるとこちらがひっくり返りそうになるほどどれも「良いお値段」だ。ブティックの奥には、店の主、兼クリエーターである男性がにこやかに接客している姿が見えた。確かに、こんな一等地に店を構えて経営を成り立たせてゆくには、品物にこれくらいの値段を付けなくてはとてもやっていけまい。足を運んだお客がレジで支払う値段は、彼のセンスの良さと才能に対する投票のようなものなのだろう。正当な値段というのは、あってないようなもの。散々迷った末に結局魅力に争いきれず、私はレジで卓上ベルに一票入れ、自分用の贈り物に包んでもらった。

そんな訳で、今夜からノルマンディー母さんが私の代役を担ってくれる。もうごはんですよと繰り返し声を荒げる必要はない。ノエルの今日を境に、小さいながらも頼もしいママンの味方が付いたのだから。

Joyeux Noël !