Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Infusion de la nuit

家族が寝静まった夜。

 

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外は雨がいっぱい降っている。この様子では、きっと一晩中降り続くのだろう。

 

この頃は夜のお茶の時間が楽しい。1日の片付けを済ませた台所で、最後に行う儀式さながらローズマリーやタイムの枝をキッチン鋏でジョキジョキと刻む。キリッとした青い香りは南仏を想わせる。それから、オレンジやシトロンやパンプルムースや、台所に見つかるありとあらゆる柑橘の皮をザクザクと刻む。それぞれにニュアンスの違う爽やかな香りがある。それをガラスのポットにぱらぱらっと贅沢に放り込んで、ぐらぐら沸かしたての熱湯を注いで煎じる。刻むも楽し。香りもよし。しばし待つも楽し。湯気で曇ったガラスポットは、緑の植物を閉じ込めた冬の温室のようにも見える。出来上がった薄緑色の暖かい飲み物は、冬籠りを言い訳に脂っこいものを食べ過ぎた重いお腹にスッキリと優しいのだ。

 

昨日は冬至だったそうだ。夕方は5時を回るととっぷり暗く、翌朝は9時になってもまだ曖昧で、10時を待ってようやく迷いなく朝と呼べそうな景色になる。長いトンネルを幾つもくぐる列車の旅をしているみたいだ。明るい表に出たと思ったら、またすぐトンネルに入ってしまう。

 

今年の冬は南仏の義母や親戚のところに会いに行かない。それぞれの家で過ごす静かな年末だ。おめでたい行事に人と集って顔を合わせられないのは残念だけれど、荷造りの要らない年末というのも珍しく、たまには悪くないものだ。

外界では、夜間8時以降の外出制限が再び敷かれ、感染が発覚したマクロン大統領がベルサイユで隔離生活を送り、隣国イギリスで発見された新型ウィルスがメディアを騒がせている。お楽しみを外界に求めても虚しく、内界に見出すが良策といったところ。幸いそれは私の得意技のひとつだ。