Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Je suis une anglaise

イギリス人ごっこ

 

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息子は学校に出かけ、夫は珍しく出張で、久々にひとりになった。

朝はしゃかりきになって書類仕事を済ませ、to do list に次々とチェックを入れ、ふと時計を見ると、もうお昼の時間を過ぎている。さて、今日は何を食べよう?

 

こんな時、いつもであれば、冷蔵庫の中を片付けがてら残り物を漁って立食スタイルで済ませるのが常。ひとりの時は、食事らしい食事なんて取らないことの方が多い。自分のために料理をすることなんて殆ど皆無だ。

でも、今日はなんだか無性に「きゅうりのサンドウィッチ」が食べたい。薄くて、スマートで、指も汚さず、しっとり白いパンを重ねた切り口に、マスタードのイエローときゅうりの涼しげな緑がうっすら覗くような、華奢で、いかにもお上品な英国式サンドウィッチが食べたい。

 

そこで、薄いパンドミーにオリーブオイルで溶かしたマスタードをうっすらと隙間なく塗り、極薄切りのキュウリを少しずつずらしながらピッタリと敷き詰め、隠し味程度に塩を振り、ブランケットをかけてやる要領でもう一枚のパンドミーを載せて上から軽く押さえ、余分な部分をスッキリ切り落として四辺を整え、お終いに、フィンガーフードと呼ぶに相応しい形に細長く切り揃えた。出来上がり。

 

サンドウィッチを用意している間に茹で卵も作った。さっき切り落としたパンの四辺をオーブンでカリカリに焼き、棒状のムイエットにする。これをトロリと半熟の黄身に浸していただくのだ。こうすれば無駄が出ない。

 

ついでに、4年滞在したシンガポールからフランスに本帰省が決まった時に、友人が贈ってくれた思い出のティーカップを棚の奥から出し、熱々のアールグレイも淹れた。

にわかイングリッシュレディーになった気分で、サンドウィッチを摘み、ムイエットで卵の黄身をすくい、紅茶を啜る。それからティーカップを片手にバルコニーに出て、花盛りのボリジの青い花々を愛でた。ひとつふたつ摘んで紅茶に浮かべてみる。イングリッシュガーデンを散策するイングリッシュレディーの気分で。

 

ヨーロッパに暮らそうと決めた時、イギリスに行こうか、フランスにしようか、少しだけ迷ったことがある。結局、美味しいものの多い国に軍牌が上がった訳だけれど。

いつか近い将来の春に、イギリスの庭を巡る旅をしたいものだ。