今年もさくらんぼの実る頃となった。
季節をいただく幸せ。
フランスの良いところは、農業大国であるから、野菜果物がふんだんにあるところ。今は、さくらんぼと苺、それにアブリコ (abricot / 杏)が店々の軒先に可愛らしく並ぶ季節だ。
サクランボで思い出すことを順不同にいくつか。
私の好きな宮崎駿氏の映画のひとつ、「紅の豚」では、マドンナ的存在のジーナという女性が、シャンソン Le temps des cerises 「さくらんぼの実る頃」を歌っていた。フランスで有名な19世期の古いシャンソンで、ノスタルジックな甘く切ないメロディーがとても素敵だ。私の両親が時々レコードで聴いていた加藤登紀子さんが、ジーナの声と歌を担当なさっている。ますます素敵だ。そのせいなのか、あの映画を観た当時、私の知り得ない両親の若かりし頃になんとなく想いを馳せた。
因みに、紅の豚のフランス版のタイトルは、ポルコ・ロッソ (イタリア語) 。近々息子に観せたい映画のひとつだ。
そして、奇しくも今日という日は、私に宮崎駿映画の良さを教えてくれた大切な幼なじみの誕生日。音信が途絶えてしまったけれど、元気にしているかしら。今頃どこでどうしているのかな。
いつだったか買い物の折に、ハーブティーの棚に、ミントやカモミールと並んで、サクランボの柄ばかり集めたパッケージが置いてあるのを見た。初めて目にしたけれど、煎じたものは利尿作用とデトックス効果があるのだとか。自然の生み出す物にはムダなところが一つもないのだなぁと感心。デトックスついでに痩身効果も期待できるというから、ひょっとしたら、ロックダウン生活で余分に付いたものを落とす味方になってくれるかもしれない。(?!)
フランスの庶民的なパティスリーにフォレ・ノワール (forêt noir) というケーキがある。
訳すと、黒い森、あるいは暗い森。ブラックチョコレートとブラックチェリーを贅沢に使った、しっとりこっくりとしたケーキだ。魔女や赤ずきんちゃんが出てくるお伽話の森を思わせて、ウィンドウに飾ってあると思わず眺め入ってしまう。スプリングにチェリーをたくさん挟んだ重厚なベッドのようでもある。その上に寝転んで、やっぱりお伽話を聞くのだ。生クリームはあまり得意でないのだけれど、その名前がお気に入りのパティスリーである。
こちらの子供たちは、よく双子のサクランボの柄のところを耳に掛けてイヤリングにして遊ぶ。我が家には子供は男の子しかいないので試したことはないけれど。初夏の風物詩だ。
今年も、あっという間にもうすぐ夏が来る。