Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Trop bon

雲行きの怪しい土曜の午後。

 

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息子がどこかに行きたいと言う。

散歩がてら話題の店に大福 mochi を買いに行って、帰りに大きな本屋に寄るというプランはどうかと提案すると、目を輝かせて二つ返事で乗ってきた。

 

6区の Maison du Mochi の前には行列が出来ていて、息子は目を丸くする。そう、mochi は現在パリでとってもホットなスイーツなのだ。特に若い女の子達の間で爆発的な人気を見せている。

小さな紙皿の上にパステルカラーの丸くて一口サイズのお餅を載せたものを手に、それと同じくらい柔らかそうなほっぺの十代の小粋なパリジェンヌ達が、金髪や栗色の髪をそよがせて街を闊歩しているのを近頃何度か見かけた。ソフィア・コッポラの映画で、お洒落なドレスに身を包んだうら若きマリーアントワネットが、パステルカラーのマカロンを摘んでいたのとどこか似た光景。いつの時代も女の子というのはモードに敏感で、この世にブームを巻き起こす広告塔なのだ。

 

「パルファン (フレーバー) は何にいたしましょう?」

「そうですね、今日はローズとフランボワーズとユズ、それにセザム(胡麻) を一つづつ下さいな」

まるでアイスクリームのようにフレーバーを選ぶ。小ぶりの可愛い mochi 達を、真っ白な細長い箱に一列に詰めてもらう。やはり細長くて奥に深い小さなブティックは、床に大柄の市松模様のタイルが敷かれ、壁はうっすら桃色がかっている。ショーケースの向こうでエプロン姿の2人のパリジェンヌが接客する。ブティックの外で首を長くして並んでいるのも女性ばかり。私達の後ろに並んでいた女子高生と思しき2人の女の子は、mochi はトレ・ボン (とてもおいしい)ではなく「トロ・ボン! (超おいしい) 」だと繰り返していた。

日本のものがこうやって受け入れてもらえるのは嬉しい。家族の一員が海外で成功しているのを見るような気分だ。

 

本屋では息子用に3冊ほど見繕う。その内の一冊は、かの有名なガリヴァー旅行記。思えばきちんと読んだ試しがない。ついでに「思い出のマーニー」の仏語訳版を見かけて、思わず自分用に買ってしまう。装丁が美しかったこともあって誘惑に勝てなかった。今月もまた、本好き貧乏。

 

明日は息子にマテマティックを教えてくれるエディーが来る日。夏休み前の最後の授業。この一年のお礼に、緑茶とユズの mochi を出す予定だ。