Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Flâneuse de Paris matinal

パリの街歩きはやっぱり楽しい。

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客室のカーテンを縫わなくてはならないので、息子を学校に送った足で、布地屋の多い18区まで出掛けた。この頃この界隈に縁がある。

 

モンマルトル寺院の袂の小高い丘。その坂道には、ありとあらゆる店が所狭しと軒を連ねている。朝なのでまだ開店していない店も多いけれど、ウィンドウを覗いて歩くだけで楽しい。人間は様々な「きれいなもの」や「美味しいもの」を生み出し、「必需品」や「欲しい物」を発明するものだなぁと感心する。

 

マグカップを片手に、若い男性店員が店の戸口に立ち、通りを眺めながら1日の始まりのカフェを啜っている。通りかかった顔馴染みのマダムと暫しお喋り。そこに朝日が当たって、なんとも平和な光景だ。

 

ポルトガル風のカフェを見かける。パステルという名物の焼き菓子を出している。白い服だけ集めたセレクトショップなんていうのもある。パリジェンヌに似合いそうな服がたくさんぶら下っている。アールデコ調の薄暗いアンティークの店の前も通る。表は朝でも店内は夜なのだ。甘い香りの漂うキャラメルの店の前を過ぎると、ムッシュウがキャラメルがけされたアーモンドの袋を手にボンジュールと愛想良く声をかけてきた。袋をガサガサ振って、一つどう?と目で訊くので、今度ねと目で答えておく。

 

魅力的な小さな本屋の前も通る。入ってはいけないと自分に言い聞かせても、やっぱり足を踏み入れてしまう。魅力的な題名の本がたくさん並んでいる。「私の部屋を巡る旅」「獰猛なバラ」「ヨーグルト瓶の悲しみ」「危険な生き方のすすめ」「馬鹿げた行為のサイコロジー」「4gのポエム」エトセトラ、エトセトラ。その魅力的な軽さに抗い切れず、4gのポエムを購入。息子に。ママの今日の遠足のお土産だ。一昨日サミアが話していた話題の小説「ヨガ」も平積みされていた。その横で、美しい装丁の画集を手に取ったマダムが値段を聞いている。“C'est presque douloureux... Mais j'achète ! " ( それはちょっと財布に痛いわ。でも買っちゃう!)と、もう捨て身よ!といった勢いでレジの人に画集を差し出す。その気持ち、よく分かる。ここに通い詰めたら私も破産してしまいそうだ。

 

何を売っているのかよく分からない不思議な店もある。アンティークな天使の置物と、古風な鏡が幾つもぶら下った店のウィンドウに、Spécialité remise en marche de baromètres à mercure とある。水銀気圧計の修繕専門店?何のことやら。

 

近くに小学校があるようで、ママやパパに連れ添われた子供達とすれ違う。まだ人気の無い小さなクレップリ (crêperie) のテラスにパパと2人の子供が陣を取り、思い思いのクレープを注文している。こんな所でのんびりしていて、学校に遅れないのかしら?パリに多いシングルファザーが、朝ごはんを用意する代わりに連れて来たのかも知れない。「ちょっとくらい学校に遅れてもパパが許す。気にするな」とかなんとか言いながら。色々なストーリーを想像する。

 

広場のメリーゴーランドの横を通過し、パリのバゲットコンクール受賞を謳うブーランジェリーの前を通り、昔時々来た懐かしの Café Progré の前も過ぎて、お目当ての布地屋に到着。なかなか楽しい道程だった。

 

さてと。

私のお眼鏡に叶い、息子の気に入って、夫に却下されない布地を選ばなくちゃ。