父の日に寄せて
すっかり忘れていたけれど、日曜は日本もフランスも父の日だった。
夫は朝からそれとなく自己申告。
「今日は何の日だっけ?」
そう言えば と思い出したけれど、わざとしらばっくれる。
「何の日って?私の誕生日は冬ですけど?」
夫は苦笑い。
それから、彼のいない隙を狙ってそっと息子に耳打ちする。
「今日はフェット・デ・ペールよ。ジャーナル・ド・ミケ (子供向け週刊誌) に気の利いたカードは付いていなかったの?」
首を横に振る息子。
過ぎたる母の日は、息子が定期購読している週刊誌におあつらえ向きのカードが付いていて、切り取ったそれにメッセージを書いて私にくれたものだけれど。
La plus Kawaï des mamans ! (この世でいちばんカワイイママンへ) とピンクの文字で印刷されたカードで、苦笑してしまった。ママンが子供に「カワイイ」と褒められるとは。Mochi のみならず、こんなところにも日本ブームの波。
結局父の日のパパへの労いは、冷蔵庫を漁ってフルーツサラダという形を取った。息子は配膳係。それから、買い物のついでに立ち寄った本屋で POWER という題の文庫本を見付けたので、冗談半分にそれも付け足してみた。包装紙の上には息子が暗号とやらでメッセージをしたため、解読のキーを書き添えた。なかなかオリジナルな合作になった。
それにしても、日本の子供達は今でも「肩たたき券」や「お手伝い券」を発行しているのだろうか?私が子供の頃は主にそんなものを両親に贈ったものだけれど、フランスでは聞いた試しがない。
実を言うと、実家の父へのささやかなプレゼントになればと思って、しばらく前に自作の童話のようなものをとある懸賞コンクールに宛てていた。結果は6月中旬とあったから、もしも入賞したならば父の日のサプライズにちょうどいいと思った。今年の夏も帰省は叶わないだろうと予想していたので、別の手段で親孝行できないだろうかと思っての策。
負け惜しみを言う訳ではないけれど、その賞は対象の作風がぜんぜん違っているのだと送った後になってから気が付いた。当然のように、賞は取れなかった。子供向きとは言えないヘンテコリンなお話だったから、ムリもない。分かってはいても、やはりちょっぴりがっかりだ。そして何よりも、気の利いた親孝行というのはなかなか難しいものだ。
何にしても、まだまだ修行が足りないということだろう。
まだまだこれからということだ。
父上、
遅咲きの娘が父上を喜ばせるような事ができるのは、まだ先のことになりそうです。ですから、どうぞ元気に長生きしてください。父上の存在は私の心の支えですから、夜中にスーパーの揚げ物をチンした上にカリントウを一袋空けてみたりするのは、なるべく控えてくださいませ。