南仏暮らしは素敵かどうか について
今年の南仏でホッとしている事の一つに、去年のようにオオムカデ (scolopendre) がたくさん出ない事がある。
オオムカデはオバケより怖い。暗がりが好きだったり、水辺が好きだったり、オバケと性質が似ているけれど、オオムカデは電気を点けても消えてはくれない。逆に明るみに出るばかり。
夜、シャワーを浴びようとシャワーカーテンを開けると「うわぁ!」、トイレの明かりを点けると「でたぁ!」、クローゼットを開けると「ひゃぁ!」といった具合。
去年はなんでも暖冬だったとかで、南仏はあらゆる昆虫が大発生した。例えば、のどかな庭の食事の招かざる客、貪欲な肉食のスズメバチは、お皿の周りを忙しくブンブン。刺されると相当痛いのだとか。
それに比べてオオムカデは静かで大人しいけれど、まずなんと言ってもそのルックスがいただけない。昆虫と言うより、サソリの仲間ではないかと疑いたくなるような大きさ。それに、足の数が多すぎる。身の毛がよだつ。自主的に攻撃することはないそうだが、アタックされると自衛の為に噛むのだそうだ。その上、毒性あり。ああ、コワイコワイ!
夜中に息子がトイレに立とうとして、裸足で踏みつけたりしたらどうしよう!と苦笑すると、義理の母はちっとも笑わず、真っ直ぐ私の目を見て、「いかなる時も裸足は絶対ダメ」と仰る。
去年、「ぎゃあ!」となって、心臓をドッキンドッキンさせながら退治を懇願すると、面倒くさそうにスリッパを持ってのっそりと立ち上がった夫。一家に1人、怖いもの知らずのむくつけき男子を持つものだ と、こんなに感謝したのは久しぶりだった。オリーブの瓶詰めの蓋が硬くて開けられずに、ヘルプを頼んだ日以来だったかも知れない。
夫には、「お前、田舎で暮らしたいって言ってただろ?これが現実の田舎生活だ。」と毒付かれた。むむむ、悔し。
南仏は、日照時間がフランス一番長く、明るく爽やかで素敵だけれど、オリーブとイチジクとブーゲンビリア以外は何も育たないくらい非常に乾燥した土地。太陽はまさに焼けつくように強烈で、その上、特大の昆虫天国。夫は、将来、定年退職後にここに移るのもいいかな と既に今から思っている風だけれど、私には少し敷居が高そうだ。