Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Un coup de fil dans le Sud

南仏に到着した。


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パリからの車窓は、麦や向日葵の畑に始まって、草を喰む牛の点在する牧場から葡萄棚へと変化する。やがて松やオリーブの林が広がり、雲ひとつないコバルトの空の下、ジジジという蝉の声がして、開け放った車窓から無花果の畑の乳臭いような懐かしい匂いが漂ってくると、そこはもう南仏だ。

焼けつくような太陽でパリパリに乾いた夏草を踏んで、車は南仏の家のゲートを潜る。今年も、玄関の脇のブーゲンビリアが私達を迎えてくれる。

 

と、その時、携帯に一本の電話を受けた。スクリーンには見覚えのないナンバーが表示されている。アロ?と応じると、電話の向こうは若い女性だった。なんのことはない、電気会社の宣伝だ。

「お得な料金形態をご提案します」

「ごめんなさい、興味がありません。それに、ヴァカンス中で頭が空っぽです!」

「了解しました。それでは、また後日掛け直します。ボンヴァカンス!」

電話を切ってから、ちょっとおかしいなと首を傾げた。まず、誰もがヴァカンスに出る8月に、こういった宣伝の電話があるのがおかしい。

それに、先方が二の句を継がず、あっさり諦めてボンヴァカンスと言うあたりも、どうもおかしい。

さては、空き巣の偵察電話だったかな?

ヴァカンス中だなんてうっかり言わなければよかった!後悔先に立たず。

 

毎年、ヴァカンスが終了してパリに戻ると、祈りような気持ちでアパルトマンのドアに鍵を差し込む。このドアの向こうにビックリが待ち受けていませんように!

 

空き巣の多いフランスだ。私たちと同じアパルトマンの隣人も、過去に何件か被害に遭っている。ドアを破られたの、郵便受けに隠してあった鍵を見つけられたの、壁をよじ登って入られたの といった具合。

 

我が家も数年前にアラームを付けたけれど、今は壊れて鳴らない。居間の壁の一面は全面ガラス張りで、外からの視界を遮るもの一つないので、目を付けられたら一溜りもない。

 

いつだったかの年は、ヴァカンスに出る直前に、件の大きな窓の鍵が壊れてしまった。修理の時間も手立てもない。仕方なくサッシにつっかえ棒をしてブロックし、窓には「Souriez ! Vous êtes filmé 」(スマイル!カメラが回ってます) と書いて貼り付けておいた。

ついでに、音に反応して両腕をバタバタ振る猫のオモチャを息子の部屋から失敬し、用心棒として窓辺のテーブルに置いておいた。それらが暗闇で泥棒の目に入らなくては仕方がないので、ソファーのサイドランプを点けっぱなしにして、さらに、洗面所に小型ラジオを点けておいた。ラジオから漏れる音が時折居間に届くと、猫のオモチャが反応してバタバタ動いては止む仕組み。

夫には「滑稽極まりない」と言われたけれど、何にも手を打たないよりはマシだと思った。

友人エドウィッジには、「ホームアローンの映画みたい!」と大笑いされた。

 

今年は、夫の親戚一家が8月一杯パリに滞在しているので、時々様子を見に、私達のアパルトマンに寄ってもらうことになっている。ついでに植物の水遣りもお願いした。ホッと一安心だ。ヴァカンス中、彼らから緊急の電話が入らなければいいけれど。。。