Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

C’est toujours très loins

近くて遠い場所 

 

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義理の姉ファミリーと一緒に、サントロペへ赴く。

私達の滞在する南仏の家から60キロ辺りに位置する海辺の街。BBことブリジットバルドーの映画で、一躍有名になった場所。

たかだか60キロだというのに、車での移動所要時間は2時間近く。なぜって、サントロペですもの!そこに続く道はいつだって渋滞しているのだ。

夫は、「サントロペはいつだって遠い場所」と苦笑する。映画祭で有名なカンヌと同様に、地価が突出して高い場所。セレブな港町。近くにあっても遠い場所なのだ。

 

昼ごろようやく到着し、パーキングはどこも満車なので少し離れたところに車を停め、港沿いにレストランを探す。いや、正確に言うと、軒並みひしめくレストランの中から空席を探す。どこもかしこも人で鈴鳴りだ。

 

テラス席に空きのあるレストランに落ち着き、マグロステーキを注文して、食べ始めると雨が降りはじめた。頭上には日除けの布が張ってあるけれど、防水加工などされてはいない。雨足はどんどん強まり、やがてお皿の上に雨漏りし始めた。それでも、せっかく確保したテーブルなので、お客は誰も去ろうとしない。よいお湿りだとかなんとか言いながら、平気な顔で食事を続けお喋りに興じている。ヴァカンス中のフランス人は皆寛容なのだ。

南仏は年中晴天で雨があまり降らない。だから雨降り対策はどこも甘いのだ。今日のような大雨は珍しい。

 

義理の姉夫婦、アンとフランクは、数年前にヴェネツィアに行った時も、アクア・アルタに当たって膝まで水浸しの旅を経験している。稀な経験で面白かったと話しながら、その時の写真を見せてくれた。見ると、レストラン内もテーブルや椅子が浮かびそうなほど浸水している。彼らと入れ替わりにホテルを去ろうとしていた観光客に、膝まである専用の長靴を譲って貰ったそうだ。

私は晴れ女だけれど、アンとフランクは強力な雨降り夫婦。一対ニで、今日は私が負けてしまったという訳なのだ。

 

食事の後は、ようやく雨の上がった街をフラフラ歩いた。パステルカラーの家々に、紅、白、ピンクの夾竹桃やブーゲンビリアがよく似合う。港に停滞する船と同様に、南仏では個人の家にもそれぞれ名前が付いている。泉の家 (Mas de la source)、 リラの家 (Maison des Lilas)、といった具合に可愛らしい飾り文字の標札が付いていて、見ながら歩くのも楽しい。パラスと呼べそうな豪邸も多いけれど、昔はここもひっそりとした漁村であったようだ。

 

アン達は途中でソルドの服を物色しようとブティックに入ったけれど、よその街よりも明らかに高いと言ってすぐに出てきた。

カフェで一休みして、人の往来を眺める。アイロンの効いたリネンの服やワンピース姿、パナマ帽を被ったムッシュー、ヴァカンスらしいお洒落な装いの人が多い。

 

帰りの道路は、行きより更に混雑して時間がかかった。

サントロペ。やっぱり近くて遠い場所なのだ。