Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Déjeuner suivi par une compétition de pétanque

アレックスとフローランス

 

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普段はリヨンに住んでいるアレックスとフローランスが、南仏のご両親の家に数日滞在しているというので、遊びに行ってお昼をご馳走になった。

 

私達の滞在する家はイチジク畑に隣接しているけれど、彼らの家は果てしなく続く葡萄畑の向こうにあった。

アレックスは、幾つになってもどこか子供のような印象を与える人だ。流行りの口髭を生やしてみても相変わらずの童顔で、動作や話し方も、やんちゃな男の子みたいだ。パートナーのフローランスはしっかりしたお姉さんタイプの人。バランスがよく、お似合いの夫婦だ。

同じ銀行に勤めていた時分に出会った2人だけれど、子供ができてから、フローランスはフローリストに転身した。幼い頃に彼女の父上が手入れをしていた花いっぱいの庭、それが彼女の原風景であるらしい。ペパーミントグリーンの可愛らしいミニバスの内装を変え、移動フローリストを個人経営している。フローリストのフローランス。名が示す通りだ。

 

アレックスのご両親は、南仏の家を家族に譲り、8月は涼しいアルプス地方で過ごしているそうだ。パリや北フランスの人はヴァカンスに南の太陽を求め、南仏の人は逆に、山辺の寒冷な空気を求める傾向にあるようだ。


よそ様の家を拝見するのは楽しい。コレクション好きなご両親のようで、居間は博物館のように様々なオブジェがひしめいていた。ローマ法皇の写真が飾ってあるところを見ると、敬虔なカトリックファミリーだ。IKEA世代の私には、使い込まれた木目の美しい家具が羨ましい。今時どこを探してもなかなか見つからない、古き良きフランス家具だ。中東のコーヒーセットや、豆引き機など、カフェにまつわるオブジェも多い。かなりのコーヒー党と見受けられた。

 

庭には夾竹桃と名の知らない南国の花々が咲き、椰子の木とユーカリの木が聳えている。大きなダイニングテーブルが至るところにある。家の中は、居間と、キッチンに一つづつ。外は、屋根付きテラスと、プールサイドと、庭の芝生の上に一つづつ。季節や天候によって、食事の場所を変えるのが好きなご両親らしい。田舎暮らしの贅沢だ。

 

私達はプールサイドのテーブルを囲んだ。蝉のコーラスを耳に、地産の辛口ロゼで乾杯する。飲み干す前にぬるくなると、アレックスがグラスに氷を入れてくれた。ロゼは冷たい方が断然美味しい。邪道なようだけれど、暑い南仏ではグラスワインにこうして氷を入れる人も多い。

 

食事は、まず、焼いたバゲットの表面にニンニクを各自で擦り付け、微塵切りのトマトとオリーブオイル、塩をひとつまみでブルスケッタにして頂く。メインはバーベキュー。オリーブオイルとレモンと白ワインにハーブを入れて一晩マリネにしておいたプレ (チキン) と、メルゲーズと呼ばれるラム肉のスパイシーソーセージを、アレックスがプールサイドでグリルしてくれた。焼き立てを頬張る。暑ければプールに飛び込めばよい。

付け合わせは、フローランスがオーブンでグリルしたナスと、色よく炒めたポテトを添えた。縦半分に切っただけのナスは豪快で、カリカリに焼けたガーリックと塩が載っていて絶妙。気取らずシンプルに、忙しそうな素振りひとつ見せず、手際よく美味しいものを振る舞ってゲストをもてなす術に感心してしまう。来客がある度に右往左往する私は、見習いたいものだと思った。

お終いは、まったりと甘いラズベリーのガトーグラッセ(アイスケーキ)を、泡の美しいシャンパンで堪能した。

 

食事の後は、典型的な南仏のスポーツ、ペタンクに興じる。暑い昼下がりに、公園の木陰で、ビア樽のようなお腹のムッシュー達が、リカーと呼ばれるウイキョウのお酒を片手に熱心に興じているのをよく目にする。

重い金属製のボールを各自3つづつ持って、最初に遠くに放っておく小さいボールになるべく近づけるという遊び。私は初心者、残りの3人は強者。女性同士、男性同士でチームを組んで競ったところ、どんでん返しあり、サプライズありで、我々女の子チームが意外なる勝利を得た。

スポーツと言うよりゲーム。トーキョーオリンピックの新種目にスケートボードが取り入れられたのなら、3年後のパリオリンピックでは、フランスらしくペタンクを採用するべきだ、そうだそうだ、と皆で笑って頷き合った。

 

ペタンク大会に終わったプールサイドのランチ。結局、私達は、延べ8時間近く居座ったことになる。日が暮れるのが遅いので、つい時間の感覚も緩む。ラテン気質というのは、この辺りの気候に由来しているのに違いない。