Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Nuit éclairée

月の明るい晩

 

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輪廻転生というシステムを信じるメリットは、未来の世界に無関心ではいられなくなる点ではないかしら。また別の命として生まれ変わるのであれば、明日の世界が悲惨であっては困る訳だから。

 

新種ウィルスの猛威や、ワクチンパスポート賛否の話題に加えて、アフガニスタンの報道が朝から晩まで流れる。暗雲垂れ込めるこの先の世界に、いつかもう一度転生して戻って来たいかと言うと、あまり気乗りがしないなぁと思ったりする。

息子が大人になる頃には、どんな世界になっているんだろう?例え自分のせいではないとしても、気乗りがしない世界を残すのは、申し訳ない気がしてしまう。

ヨーロッパ中世という時代は、長い暗黒の時代と呼ばれたり、富や栄光を過去に置き去りにした「逆戻り」の時代と見做されたようだけれど、現在の私達も、そんなある種の中世時代に突入しているのかも知れない。

 

夕方の食卓では、フランスがどうしてテロリストの恰好の標的なのか、キリスト教とイスラム教の歴史的な対立のことなどが話題になった。思うところが多いテーマだ。

 

南仏に来る途中、中継地点として立ち寄った町には、十字軍時代の古い教会があった。古いものが長く残る石の文化は、時の旅に誘うようで魅力的だけれど、ひょっとしたら、その分、記憶を改めるのも困難だったりするのかも知れない。

 

ローマ帝国も、イスラムの発祥の地も、初めは多神教であったのになぁと思う。神様が何人いても、よその神様にいくら寛容であっても、だからと言って争いが避けられる訳ではないけれど、それでもやはり一神教は厄介だ。

 

月明かりの照らす庭のテラスで、長椅子に寝転がって、しばらくそんな事を思った夜。

息子が横にやって来て、リモコンカーを操作して遊び始めた。ジージーガタガタうるさくって、月明かりの詩情もあったものではない。こちらの迷惑顔も全く意に介さず、「いいでしょう?ママもやってみる?」などとのたまう。すっかりコミックだ。親世代の杞憂を他所に、子供達は案外ひょうひょうと生きていくものなのかも知れない。そうあって欲しいなぁと思った。

 

南仏は猛暑が去って少し涼しくなった。少しずつ、それでも着々と秋に向かっている。