Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Bye bye Paris, bonjour Beaune

8月1日、パリを発った。

 

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例年のように、車で南を目指してひた走る。

途中の車窓からは、時々、黄色いハンカチを広げたようなひまわり畑が見える。何千本、何万本というひまわりの花が、コンサートの観衆みたいに、みんな揃ってお日様という名のスターのほうを向いている。人っ子1人、トラクターの一台も見当たらない。どこかシュールな光景だなと思う。

 

ブルゴーニュ地方の景色は至ってなだらかで、行けども行けども変わり映えしない。この時期、刈り込みの終わった麦畑は裸ん坊で、遠目に見るとまるでコルクのような干し草の俵が、ぞんざいな様子でいくつも放ったらかしてある。緑のとうもろこし畑も横切る。やっぱり農民らしき人の姿は一度も見かけない。

 

高速沿いに時々シャトーの表示を見かける。遠くの丘の上に、それらしき灰色の城壁や塔が見えることもある。中世の時代から何百年という月日を経て、ずっとその場所から領土を見下ろしてきたのだろう。領主が土地を治め、その管轄下の農民達がせっせと畑を耕していた時代に思いを馳せる。その頃から景色は殆ど変わっていない筈だ。石の文化はタイムスリップを容易にしてくれる。

 

とあるサービスエリアの売店で、お城の点在する地方であるのに因み、代々の王族の置物が売られていた。華やかな衣装を纏った首のないフィギュア、あるいはマネキンのミニアチュール版といったところ。ルイ14世やナポレオンも並んでいるけれど、やはりドレスの華やかなマリーアントワネットに目が留まる。後世でこうして土産物になってみても、首無しフィギュアというところが皮肉で運命的だなと苦笑してしまった。

 

行程の三分の一まで来た辺で、一晩目はボーヌ (Beaune) という町に宿を取った。有名なワインの産地だ。日が暮れる頃に雨が降りはじめて、8月だというのに肌寒いほど涼しい。夕食はカフェバーのテラス席に陣取り、ハムやサラミといったシャーキュトリーをツマミにグラスワインで簡単に済ませ、翌朝は観光もせずにボーヌの町を後にした。次回はこの町を目的地に訪れてみたいものだ。

 

マイペースな私は、途中の過程を楽しみながら休み休み旅行するのが好きだけれど、効率性を重視する夫は、脇目も振らずに前進して目的地を目指そうとする。最終地点に到着しないことには、ヴァカンスに入った気がしないらしい。

 

高速に乗ってもフランス縦断は気が遠くなるほど時間がかかる。中世の時代の遠征なんていうものは、どんなにか忍耐力が必要だったことだろう。それとも、早さを知らない時代や場所に生きると、自然に辛抱強くなるのかな?科学技術は明らかに進化したけれど、果たして人は進化しているのか、後退しているのか。

そんなことを思いながら車窓を眺めた。

南仏まで残すところ約600km。