Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Vous connaissez Shimazaki ?

また買ってしまった。3冊も。

それを携えて行きつけのカフェに落ち着き、待ち合わせの時間まで1時間あるので、ドゥブルエスプレッソを頼む。

 

昨日、ようやく本棚の整理をして、もうしばらくは買うまいと誓ったのに。

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いきさつはこうだ。

以前から気になっていた、息子の学校の隣りにある本屋に入った。紺の木枠のショーウィンドウに、本の飾り方からして素敵な店だ。

しばらく本の森を、この本をめくり、あの本をひっくり返しして愉しく物色してから、夏のヴァカンスから気になっていたシャトーブリアン(生誕地のサンマロに足を運んだので)の分厚い本と、書店のお勧めマークが付いていた、やはりシャトーブリアンを題材にした新刊の小説、それから日本語で読み損ねたムラカミハルキを一冊買うことにする。

店員の、私と同年代くらいの女性は、気さくで感じがよい。だいたい本好きというだけで、もうすでに半分気が合ったようなものだ。

 

「素敵なお店ですね。つい散財してしまうから、あんまり頻繁に足を踏み入れると危険だわ」というと、メルシーと笑って、私のセレクションの上に目を落とし、「今日はシャトーブリアン日和のようね」とウィンクする。

息子がすぐ横の学校に通っていること、この書店では毎週水曜日に子供向け朗読会をひらいていること、などが話題になり、ついでに私がジャポネーズだと分かると、「シマザキは読まれました?」と聞いてきた。古典の島崎藤村のことかと思えば、そうではなくてカナダ在住の現代作家のシマザキだと言う。

そう言えば、しばらく前、近所に住む知人のベネディクトが、買い物のすれ違いざまに「ミホ!ちょうど良かった!昨日、日本人作家のいい本を読んだの。シマザキ。知ってる?」と聞かれたことを思い出した。その後その名をすっかり忘れていたけれど。

書店の女性は、棚の上に鎮座している文庫本5冊入りの装丁の美しい箱を見せて、「読んだけれどとても良かったわ」と言う。「その本、知人から勧められたのにすっかり忘れてました。思い出させてくださってメルシー!次回はそれを買いにきます」と告げて、カラフルな紙袋に入れてもらった三冊の本を持って店を出る。

 

先日の国語(フランス語)の先生の突拍子もない「書いてみてはいかがですか?」に始まり、フランス語で執筆して静かな人気を読んでいる日本人現代作家の話といい、なんだか良い予兆だなと思う。

 

そうこうしているうちに、そろそろ待ち合わせの時間。カフェを出ることにしよう。

もっと、読む時間と書く時間があったらいいのに。