Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

une séance photo

ソニアの誘いでIKEAに遊びに行った。

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郊外まで足を伸ばさなくとも、パリのマドレーヌに新店舗がオープンしたから、ちょっと冷やかしに行かない?ついでにそこでお昼ご飯するってのはどう?という提案だった。

ソニアはかっこいいタイプの女友達だ。いつもピシッと姿勢がよく、長身でスマート、すらりとした長い手足、ちっちゃな頭。センスが良く、自分に似合う服の選び方、着こなし方を熟知している。化粧はほとんどしないけれど、唇に真紅のルージュだけは忘れない。得意な料理の話をさせたら聞いている方が l'eau à la bouche (生唾ごくり)で、ボディラインに気を付けて食の好みは極めて健康志向、それなのにクロップ(タバコ)だけは辞められない、そんな完璧過ぎないところも楽しい。そして、頭の回転のすこぶるよい女性だ。

今日の彼女は、ベレー帽風の黒いニットのボネを被り、体にピッタリした黒い革ジャンに黒いワイドパンツ、首には水玉模様のスカーフを巻いて、生粋のパリジェンヌの出立だ。

待ち合わせしたメトロの入り口で、先に到着して待っていた彼女は、人混みの中でも一際目立っていた。おしゃれな人と一緒に居ると、こちらまで背筋が伸びて気分がよいものだ。シックでエレガントな外見と、極めて気さくで姉御肌な性格。この絶妙なバランスが彼女の大きな魅力だ。

 

IKEAで、もうすぐ始まるノエルのデコレーションやら、プレートの上に被せるミクロオンド(電子レンジ)用の蓋やら、あってもなくても良さそうな取り留めのないものをいくつか買い物袋に放り込み、残りの時間は予定外の「撮影会ごっこ」となった。

気に入ったインテリアの一角を見つけては、ここは私のキュイジーヌ、あっちは私の寝室、アトン、アトン(attends, attends 待って 待って)、ブジュパ、ブジュパ(bouge pas, bouge pas、動いちゃダメ 動いちゃダメ) と、きゃーきゃーはしゃぎながらバッグの底の携帯を取り出してはしまい、しまっては取り出して、それらしくフライパンを片手に持ったり、優雅にベッドに横たわってみたりして、互いの「生活のワンシーン」を忙しく写真に収め合った。

女同士で他愛もなくはしゃぐ時間は、何処にいても、いくつになっても、楽しい。ささやかなことで大騒ぎできるのは女性の特権だ。通りすがりの他の買い物客達も、私達を見てクスクス。中には仲間入りしたそうな女性もいた。

 

昼時になったので撮影会を打ち切り、館内の flambant neuf (燃えるように新しい) なカフェテリアに移り、紙コップで乾杯し、お買い得ランチを取りながら、最近のお互いの近況などを一通り話した。モダンなカンティンヌ(食堂)に居るみたいだった。さしずめ「社員食堂ごっこ」だ。私がどこかの会社の社員だったら、こうやって毎日カンティンヌで顔を合わせて話す同僚がいたのかも知れない。それって悪くないなと思った。その同僚が、ソニアのようなタイプのサンパティックな人だったらなおさらだ。

その後、私は息子の誕生日プレゼントを探しに、彼女は旦那さんのスポーツウェアを見繕いに、雨の降りしきる屋外に出て散り散りになる前に両頬にビズ(挨拶のキス)を交わし、「またね」した。

「また遊ぼうね」

今度はどんな「ごっこ」をしようかな。