Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le couscous de tatie

義理の叔父の奥さんは、セネガル出身のアフリケンヌ (Africaine アフリカ人)。

f:id:Mihoy:20200104072140j:image

郷土料理のクスクスを作ってあげるから食べにいらっしゃいと招かれ、家族3人でいそいそと出掛けた。アパルトマンの3階でエレベーターを降りると、廊下中に美味しそうな匂いがただよっている。それを道標に彼らのドアにたどり着いた。

スムール(クスクス用の細かいパスタ)は、日本で餅米を炊くのと同じ要領で、布巾に包んで蒸し器にかけてあった。鍋には鶏肉とナスとパプリカのトマトソース煮がぐつぐつ。クスクスは、モロッコやアルジェリアの料理だとばかり思っていたけれど、国を問わずアフリカ大陸のあちこちで作られる料理らしい。ワインは断然ロゼ、あるいはグリ(vin gris : 薄いロゼワイン) が合う。

ヨーロッパの冬のテーブルで、ママン・アフリケンヌのお手製の熱々のクスクスが湯気をくゆらせる光景は、我ら食いしん坊達のお腹をグーっと鳴らせた。Miam miam ! 


アフリカ大陸にはまだ足を踏み入れたことがないけれど、冬の寒い日は南国に想いを馳せるだけで体が緩む。フランスにはアフリカ出身の人がたくさん暮らしているけれど、彼らはみんな体の中に太陽の記憶を有しているとしか思えない。おおらかな人、明るい人が多いのだ。運動神経が良かったり足が速い人が多いのは、外科医のジゼル曰く、筋肉の付き方が違うのだそうだ。

 

義理の叔父の奥さんは、20才の時からフランスに暮らしている。それでも、お料理を振る舞う時や、お代わりを勧める時のちょっとした気遣い方などに、男性を敬う家父長制の習慣の色濃い国から来た人だなと思わせる節がちらりと覗く。そこのところは、フランスより日本に少し近いお国柄かも知れない と思う。ずっと日本に暮らしていたら気づかなかっただろうけれど、ワインは手酌、あるいはどちらかといえば男性が女性に注ぐのが慣例のフランスに住み慣れると、そんな彼女のちょっとした仕草の違いにも敏感になる。食後に女同士でお喋りしていると、私の祖国ではね、子供を産まない女性は、女性としての役割を果たしていないと見なされるのよ と話していた。

 

昔、パリに暮らし始めた頃にちらっとだけお付き合いしたボーイフレンドがいて、彼のお姉さんは年上のアフリカ人の恋人と暮らしていた。招かれて遊びに行ったら、食事の席でその「お姉さんの年上の彼氏」に、「キミはもっともっと食べていっぱい太らなければならない」と盛んに言われて可笑しかったのを覚えている。彼の祖国では、女性は恰幅が良くてこそ美しい とされていたようだ。ジェネレーションも関係していたに違いないけれど、所変われば何とやら。そしてボーイフレンドのお姉さんは、言うまでもなく堂々とした立派な腰の持ち主であった。

 

フランスの女性は、太っていようが痩せていようがお構いなし。(あるいは、少なくともそのように見える。) 男性に注いでもらったワインで乾杯して、今年も bonne année !