Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Comédie & baby-foot

子供達は引き続き冬休み。

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今日は、息子とその友達を連れてモリエールの "Le malade imaginaire"「病は気から」を観に行く予定だった。

ところが、コメディアン(役者)の体調不良で、前日に上演キャンセルの知らせが来た。( それはもしかしたら une maladie imaginaire のせいかな?と息子は気の利いた冗談を言っていた。) 映画と違って毎回生身の人間が演じる訳だから、そういうこともある。それならば、と、改めて別のお芝居の席を予約した。観劇に連れて行ってあげる という子供達との約束だったから。

ところがところが、当日の今日になって、今度は息子の友達 T が熱を出して来れなくなった。どうやらタチの悪い風邪が流行っているらしい。

劇場の席はもうすでに3席取ってある。どうしよう?と思っていたところへ、タイミングよく別の友達S (のママン) が連絡をくれたので、結局その子を誘って観劇に出向いた。

 

お芝居のタイトルは、"Toute la comédie... ou presque"  「喜劇のほぼ全て」。ヨーロッパ喜劇の歴史を、子供にも大人にも分かりやすく1時間でまとめる という、愉快で向こう見ずな試み。役者はたった3人。こじんまりしたカフェテアトルで、観客もまばらだった。

女性1人、男性2人のコメディアン(役者)のうち、コメディエンヌ(女性役者)の明るいパワーが炸裂していた。観客が少なくったって気にしない。エネルギーの節約なんかしない。決して若い人ではなかったけれど、天然の底抜けに元気なパワーが心地よい。内容だって捨てたものではない。

 

ヨーロッパ喜劇は、古代ギリシャ時代に、政治的な題材の悲劇が主流だったところを、それに対抗する形で生まれたのが始まりだ と紹介していた。ギリシャの神々に捧げるという名目で上演された。その後、ヨーロッパを一神教のキリスト教が占拠してからは、「神々」なんてもっての他、聖書に関する題目(必然的に悲劇)以外はご法度の時代が来たそうな。その後、中世のイタリアで道化師による即興喜劇がヒットしたのを皮切りに、16世紀イギリスのシェイクスピア、17世紀フランスのモリエールといった偉大な劇作家達の登場を経て、今日に至っている という訳だ。

余談になるが、古代ギリシャ時代から実に中世まで、イタリア即興喜劇が現れる以前は女性は舞台に登る資格がなかったという。何とまあ!

 

劇場を後にしながら、面白かった?と、息子に比べて観劇中の反応の薄かったその友達に聞こうとして、やめておいた。招待された立場でノンと答えられる訳がないものね。愚問というもの。と、思っていたら、息子がすかさず無邪気に訊ねた。「ねぇ、Sはどの場面が一番良かった?ボクはねぇ、太っちょのコメディアンが変な発音で話す場面がすごく可笑しかったよ!」なるほど、どこが良かったか?と聞くのは、なかなかいい感想の引き出し方だなと思った。子供に教わる事は案外多い。

おやつは baby-foot とビリヤードのある広いカフェバーを見つけて入った。夕方なのでここも閑散としている。子供達は嬉々としてバビーフットに興じ、一人前にバーカウンターで注文したソフト(ドリンク)で喉を潤し、家から持って来たバナナでおやつタイム。ここ、Oberkampf (オーベルカンフ)といえば、学生時代にはよく遊びに来たカルチエだ。若者好みのカフェやらバーやらが軒を連ねて、独特の雰囲気を醸す。子供が生まれてからというもの、すっかり足が遠のいていた。

そのうちあなた達も、自分たちでこの界隈に友達 (copains) と遊びに来るようになるかしらね と、未来の若者2人に言うと、「ノン ママン、コパン (友達 copains) じゃなくてポット(ダチ potes)と来るよ」と返された。