Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

L’été de Totoro

息子の夏休みは、動の日と静の日を交互に組むようにしている。

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だから、ミュゼに連れて行った翌日は静の日。特別な事はせず、おうちで過ごす。なんなら家で映画を見る日にしてもいいよと言うと、久しぶりにトトロが観たいと言うので、そうすることにした。

 

今年は、日本に行かずに過ごす7月。母子でノルマンディーに小旅行した以外は、特に遠くに行く予定もない。トトロのおはなしの舞台である日本の田舎風景が目に染みた。ストーリーの時期もちょうど7月くらい。タイムリーな選択だった。

スタジオジブリの映画はフランスでもとても人気がある。子供のいる家庭であれば、トトロを知らない人はいないと言っても過言ではない。私の知っているママン達は、みんな口を揃えて J'adore ! (ジャドール / 大好き!) と叫ぶ。日本人としては鼻が高い。

 

あの「まっくろくろすけ」をどうフランス語に訳したのか? ( ノワール Noir を変形させて ノワロ Noireaux という造語にしてあった) とか、まだ年端のいかないメイが「トウモロコシ」とうまく言えないシーンは?(それについては訳されていなかった)とか、お父さんと子供達が一緒にお風呂に入る日本的な場面は、フランス人の目にどのように映っただろう?とか、息子の横で、そんなこんなをいろいろ思いながら鑑賞した。

 

トトロが子供達に渡した木の葉の包みには、ドングリをはじめ、いろんなタネが入っている。包みを解いた子供達が「魔法のタネ!」と叫ぶセリフに、思わず私も便乗する。「ママも台所でいっぱい集めてるでしょ?魔法のタネ!」息子は珍しく素直にこっくり頷く。

 

フランスの子供達は、みんな中学生くらいになるまで一人で外を出歩かない。近所の学校に行くのも、遊びに行くのも、どこに行くのも大人が付き添う。トトロの映画の子供達は、それに比べてなんて自由なんだろう。そして大人達も!

私が子供時代にいとこ達と過ごした田舎の夏休みは、トトロの夏と似ている。叔父さんも叔母さんもおばあちゃんも、みんな働いていたし、私たちは時々家の手伝いをして、残りの時間は子供同士で十分楽しく忙しかった。私が子供の頃、父や母から彼らの子供時代の話を聞いて、時代の違いを感じたものだけれど、今や息子と私との間にそんな差を感じるようになった。たいして昔のつもりもないのに。

どの世代の人も、歳を重ねて自分の子供時代を思い返すと「あの頃はよかった」と呟くような気がする。例え物の少ない恵まれない時代に生まれた人でさえ。いや、世の中が便利なもので溢れていなかった時代の人こそ。ノスタルジーが過ぎ去った時間を美化するのだろうか?

きっと、子供はみんな、幸せ探しの天才なのだと思う。だから子供のうちはなるべく便利でない生活を味わって、その幸せ探しの才能が発揮される邪魔をしない方がいいのに違いない。

 

我が家のベランダには、この春に植えた私の魔法のタネ、マンゴーの芽がぴょこんと顔を出した。南国育ちのマンゴー。フランスの気候でちゃんと育ってくれるといいけれど。これが実ったら、きっとおいしいフルーツサラダにしてあげるからね と、息子にも夫にもディナーに来た友人ピエールにも告げて、気が早いねと笑われた。

桃栗三年、柿八年。さて、マンゴーは?

大きくなあれ 大きくなあれ!