Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

En attendant la séance d’un film

シネマの上映時間までカフェで待つ。

f:id:Mihoy:20200227231240j:image

エスプレッソを頼み、バッグに忍ばせてきたマリーアントワネットの本を出して読む。

モンパルナスの老舗カフェ、セレクトのエスプレッソを、本を片手にひと口。何気なく口に含んでハッとする。他所で飲むエスプレッソより美味しい。さすがの老舗だ。別に取り立ててこのカフェを選んで入った訳ではなく、シネマの隣にあったので入ったに過ぎないけれど。

ガラス越しの外は雨。メテオ(météo 天気予報)は、今日も明日も明後日も雨。ここ1週間まいにち雨。すなわち、映画日和が続く。

 

本に目を戻す。オーストリアから王妃になるためにフランスにやってきたマリーアントワネットだが、その戴冠式は、ドイツ国境近くの町、ストラスブールの辺りで執り行われたことを初めて知る。かの地のノートルダム寺院の鐘は、その祝礼の日も賑やかに鳴り響いていたようだ。

ストラスブールは去年の春に小旅行に訪れたばかり。パリのノートルダム寺院が火災に遭った翌月だった。

赤味がかった石造りで、すらりと長身の、優雅だけれどどこか骨ぼねしいゴシック様式の寺院に圧倒された。パリに舞い戻る前夜、路上に出されたカフェのテーブルに陣を取り、文字通り目と鼻の先に聳え立つノートルダムを堪能しながら、ぬるいグラスワインを傾けた。かの地に個人的な愛着などありもしないのに、彼女 (ノートルダム) のおかげで、どこかノスタルジックな夜だった。この薄紅色の高齢の貴婦人は、お隣の国から蒼眼の幼い女王が遥々やって来た200年以上前の記憶をも、その肌に宿しているのだ。

今年の春は、ドイツに住んでいる友人一家を訪ねる予定だ。彼らに、一緒にオーストリアを訪ねてみないかと誘われた。思ってもみなかった行き先だけれど、pourquoi pas (why not) と答えておいた。図らずもアントワネットを偲ぶ小旅行が続きそうだ。

 

さて、そろそろ映画の上映時間。こちらの人間は、映画館にさえよく遅れてのんびり入場する。すっかりそのパリ時間に慣れた私。急ぐことはない。このエスプレッソをゆっくり味わってから腰を上げるとしよう。予告を逃したって、大したことはない。