Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Voyage dans le temps

冬はシネマにもってこいの季節。

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北風が冷たかろうと、寒々しい雨が降ろうと、どんなに毎日空が重苦しいグレーであろうと、暖かい館内の緋色のシートに身を沈めてしまえば全くお構いなし。

 

J'accuse (我、告訴したり)という映画を観た。

19世紀末のフランスで実際に起こった「ドリュフス事件」を題材にしたフィクション映画だ。

タイトルは、19世紀の偉大なる作家、エミール・ゾラが当時寄稿した新聞記事のタイトルに由来している。フランスでは、小学校の歴史の教科書にも載っている有名な事件だ。

 

当時のフランス陸軍内のユダヤ人上官ドリュフスが、ドイツ軍へのスパイ行為の容疑で監獄入りするが、彼の無罪を確信したピカール中佐が、自らが属している軍隊 (ドリュフスの無罪を隠蔽しようとした) を敵に回して法廷で戦う と言った内容が軸になっている。そしてこのピカールに賛同して、筆の力で軍隊に鋭い八重歯を向けたのが、当時すでに作家としての名声を得ていたゾラといった具合だ。

当時のフランス社会にユダヤ人迫害のムードが蔓延していたことがよく伺われる映画だった。

 

ポリティック(政治)はマス(集団)。リテラチュール(文学)は個人。私は、常に私個人としての正義を基準に生きていきたいと思っている。

 

この映画を観て、ゾラのことをもっと知りたくなった。

事件当時にヴィクトール・ユゴーがまだ存命していたのなら、間違いなく彼も筆を取り、ピカールを支持していただろうにと思った。

 

撮影にはパリの現在の街並みがそのまま使用されていた。なるほど、21世紀の今になっても、石畳も、石造りのアパルトマンも、カフェやオペラ座も、まだ当時の面影のまま残っている。そこに馬車や当時発明されたばかりの車を走らせ、当時の衣装を着せた俳優達を配しさえすれば、19世期にタイムスリップである。

そういった古い時の流れが感じられる街、パリが、私は好きなのだ。