キャロリーヌは恋をしている。
私より確か4つくらい年上で、育ちがよく、学もあり、それでいてどこかポップでロックなムードがある。小柄な細い体に端正なちいっちゃな頭を乗せている。青眼の美しい人だ。私の良き友でもある。
キャロリーヌの恋は、彼女の現在のパートナーも承知している。なぜって彼女が全て話したから。隠し事は嫌いな人だ。
パートナー氏は、かれこれ20年も一緒に暮らした愛する人の気持ちが余所に移ったことが耐えられない。このロックダウン期間が終わったら僕が頭を冷やしに出て行くよ と言ったそうだ。しばらく離れて暮らして様子を見よう と。自分が出て行こうと思っていたキャロリーヌは、不意を突かれたというか、先を越されたような気持ちがしているらしい。
聞いていた私は、彼女が恋をしたというのに、自分から出て行こうとするパートナー氏のイニシエーションは男らしくて悪くないと思った。
キャロリーヌは自問自答の日々だ。
差し伸べられた手に応えるべきか。抑えがたいパッションを追行するべきか。それとも、ハートは以前のように打たなくとも、これまで時間を共にした人と残りの道を歩くべきか。一度きりの人生。後悔しないために、踏み込むか、留まるか。
恋のお相手のSMSの言葉一つにも一喜一憂する日々。何気ない言葉の行間に、あるいはその沈黙に、ありとあらゆる事を想像してしまって落ち着かない思春期の恋のようだと笑う。少なくとも、今の彼女はいつもにも増して美しい。
私が思春期の頃によく聞いた歌の歌詞を思い出す。
情熱の真っ赤なバラを胸に咲かせよう
情熱は美しい。情熱は人を傷付ける。
情熱は嵐だ。嵐は世界を一掃する。
もうすぐロックダウンの日々が明ける。
友として、恋の行方を見守ろう。