だいぶ日が伸びた。
今日の日没の時刻は21時過ぎ。
ソファーで息子に本を読んでやっていると、窓から見える西の空がハッとするほど濃いピンクに染まっていた。本を置いて窓辺に行き、きれいな色の空をしばらく一緒に眺めた。それからまたソファーに戻り、続きを読み終えてもう一度目を上げると、ピンクの夕焼けはもうすっかり消えていた。「あーあ、もう消えちゃった。」息子はがっかり。
サンテクジュペリの星の王子さま (Le petit prince) の話は、こんな風だ。
王子さまの住む星はとても小さくて、椅子の位置を少しずらしさえすれば、1日に何度でも夕日を眺めることができる。星の王子さまは夕日が大好きで、一度なんて同じ一日に44回も眺めたのだと自慢する。そして、悲しい時、人は夕日が眺めたくなるものなのだと付け加える。44回眺めた日のあなたは、何をそんなに悲しんでいたの?
私がうんと幼かった頃、確か父が図書館で借りてきたマザーグースには、こうあった。
夕焼けは 羊飼いのよろこび
朝焼けは 羊飼いの悲しみ
記憶が定かであれば、確かミステリアスな声音の岸田今日子さんの朗読だった。不思議と印象に残り、どういう意味だろうと色々思いを巡らせたのを覚えている。羊飼いにとってのお天気占いではないかしら?と母が教えてくれた。丘の上で空を眺めて立ち尽くす羊飼いの後ろ姿が目に映るようだった。
これから、夏至に向かってどんどん日が伸びてゆく。子供達を早く寝かせるのに手を焼く明るい季節だ。