Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Paris sans café

結局、往復で 12Km も歩いた。

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昼下がりに、息子の歯列矯正のドクターとランデブー (約束) があった。いつもならメトロで行くところを、もともと薄暗くて清潔とは言い難い上、この騒動と来ては息子を連れて乗る気にならず、天気も良いので歩くことにした。片道約1時間15分。パリで一番長い通り rue Vaugirard (リュ・ヴォジラー) の端から端まで歩き、更に少し行ったところにマダム・フーニエの診察室はある。

 

先週までの寒さとは打って変わって、今日はすっかり夏日。パリの街は結構な人手で、人々がマスクを着けてさえいなければ、まるで以前の生活が戻ってきたかのような錯覚を覚える。車通りも増えた。

 

実は、年末にグレーブ (grève / ストライキ) があった時にも、公共交通機関が全面的に止まっていたので、この同じ道程を一度歩いた。あの時は、街のそこここにパリの代名詞であるカフェがあった。途中で足を止めて一息入れる楽しみがあった。

ところが、今日歩いたパリにはオアシスがない。カフェがない。レストランもない。店内に椅子を積み上げて、戸口のシャッターを下ろしたまま。そうなると、これと言った止まり木がないので、仕方なく行きも帰りも休まず黙々とひたすら歩いた。食いしん坊の街パリからカフェやレストランが消えると、なんと淋しいことか。太陽はジリジリと照り付けて、アスファルト砂漠という言葉が浮かんで来た。道の左右に続くオスマン式の石造りの建物が美しいのが、せめてもの救い。

 

もしも日照りが続いたら、水をどうにかしなくちゃならない。この砂漠のどこに水源を確保できるだろう?オアシスのない乾いたパリ歩きで、そんな事をふと思ったりした。

 

ほっと心が和んだのは、フローリストの前を通りかかった時。瑞々しいブーケがウィンドウを彩っていた。こんなご時世だからなのか、平日のデイタイムだというのになかなかの盛況で、花を求める人達が戸口に並んでいる姿が微笑ましい。やっぱり小さなオアシスが必要なのだ。

 

カフェのギャルソン達はみんな今頃どうしているのかしら。ヴァカンス慣れしているフランス人のことだから、アパルトマンの狭いバルコニーにデッキチェアーを無理やり広げてせっせと日焼けしているのかな?