それは、息子の化学の宿題をみてやっている時だった。
エネルギーとは何ぞや?という説明の途中に、こんな引用があった。
Rien se pert, rien se crée, tout se transforme
何も失われはしない、何も生まれはしない、すべて変容するだけ
エネルギーを生むという言い方をするけれど、実際には作り出されるのではなく、既に存在するものが形を変えているだけ という事だった。
引用は、18世紀の Antoine Lavoisier という名のフランス人科学者のものらしい。化学変化が何たるかを説明したに過ぎないのだけれど、哲学的な含蓄の深い言葉だなと心に残った。
そもそも、18世期では既に科学という分野が確立されていたけれど、古代ギリシャ時代には科学は哲学の一部とみなされていたくらいだ。
先の引用は、輪廻転生と同じ事を言っているような気さえする。もちろん科学者のご当人はそんなつもりで言った訳ではないので、それとこれとは分野が違うと憤慨するかもしれないけれど。(なにせ、キリストの教えには輪廻転生の概念は全くないようだから。)
もしもこの地球上の、あるいは宇宙全体に存在する全てのものの総数が、始めから一定数に決まっているのだとしたら?命も含めて。それがただ単に姿を変えて巡っているのだとしたら?
大切な人を失くしたことのある人には、分かるかもしれない。形が変わるだけなのかしらとふと思う感覚が。風になり、光になり、花になり、永遠にさすらうものを垣間見るような感覚が。