Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

La surprise

今日はフランスの 母の日。

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2、3日前、息子が台所に来て言った。

次の日曜は何の日か知ってる?

知らないと答えると、嬉しそうに 「フェット・デ・メール (fête des mères / 母の日) だよ!ぼくはね、パパと一緒にママのプチ・デジュネ (朝ごはん) を作って驚かせてあげるんだよ。」

サプライズを企てているのだと当人にばらしてしまうあたり、彼独特の幼さが可笑しい。図書館で借りた子供用雑誌に、母の日のサプライズ・プチ・デジュネのレシピの一案が載っていて、そのページを密かにコピーして企てていたようだ。しかし、そのコピーの紙というのもその辺りに放ったらかしてあったので、実はとっくにママの目に留まっていた。

かわいい息子である。

 

さて、今朝。

いつも早起きの息子が寝室に来て、いつもの週末のごとくのたまう。「ママ、ボクお腹空いた。朝ごはんは?」そう言ってから不意に思い出した様子で、慌てて取り消す。「あ!ママ、今日はまだ寝てていいよ。まだ起きて来ないでね。」

ドタドタと台所に行く音がして、雑誌のコピーを見せながらパパに交渉しているのが聞こえる。これをママンに作ってあげたいのだけれど、手伝って貰えないかと。何事も手っ取り早く効率的なのを好む夫は、花束を買いに行った方が早いし喜ぶだろうと首を縦には振らない。だいたいお前のママンは朝食はたいして取らないんだよと説明している。寝室のドアは開けっ放しなので、やり取りの一切が聞こえてくる。息子はさらに押すけれど、説得し切れずにパパはシャワーを浴びに浴室に消えてしまった様子だ。沈黙の中に息子の消沈が感じられた。

物作りが苦手で、台所にはあまり寄り付かず、料理と言えばサラダくらいしか手伝ったことのない彼だ。件のレシピは彼一人では用意できない。しかるべき道具がどこにあるかさえ知らない。

ベッドから起き上がる。

息子の気持ちは、それだけでママン冥利に尽きるというもの。それはそれは嬉しかったので、なんだかヘンテコな立場だけれど、自分用のサプライズ朝ごはん作りを手伝うことにした。

本当はパパと準備してベッドに持っていってあげようと思ったのに と、肩を落としてベソをかく息子だけれど、来年はあなた1人でも準備できるように、これからはもっと一緒に料理をしようね言うとコックリ頷いた。

実を言うと、自分の食べるものを作れるということは、学校でいい点を取ることよりもずっと大切な事の一つだと思っている私だ。

 

一緒にイチゴをつぶし、オレンジを絞り、レモンをこすったグラスの縁に砂糖でお化粧をほどこして、そこにイチゴピューレとオレンジ・プレッセのカクテルを注ぐ。色紙をハート型に切り取ってデコレーションにする。それから、バナナにイチゴを楊枝で刺してケーキのように飾る。2人よりも1人で用意した方が早く終わるのだけれど、手を出し過ぎてはいけないので辛抱。これは確かに、せっかちで物作りが苦手なパパには向かない役目だなと思った。

 

イチゴとオレンジの手作りカクテルは、甘く爽やかな最高の味。デコレーションしたバナナは瞬く間に息子のお腹に収まった。(私は飾りのイチゴを分けてもらった。) 夫からのブーケもテーブルに飾って、プチデジュネを済ます頃は、もうデジュネ (昼食) の時間になっていた。

 

来年は1人で準備できるかな?

息子に、

ありがとう。