Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Viana, la légende du bout du monde

映画 Viana の覚え書き

(邦題 : モアナと伝説の海)

 

f:id:Mihoy:20210708082933j:image

 

息子のヴァカンスに入った。

朝方、近所のスーパー Monoprix にずらりと並んだ夏休み用の問題集に混じって、ディズニーのムービーノートなるものを見つけた。小さい子供用かと思ったら、12〜99才向きとある。20本ほどセレクトされた映画を観て、それぞれのクイズに答える形式のアクティビティー帳だ。

私が子供の頃はディズニー映画なんて殆ど見なかったけれど、息子の幼少時代はディズニーアニメに彩られている。そもそも彼はミッキーやディズニーランドが大好き。私とは世代以外にも好みも性格も違うのだ。

たまにはこういうのもいいかな、7月はどうせどこにも行かないことだし、と、そのムービーノートを一冊ひやかしに買ってみた。今だにディズニーアニメを喜んで観る息子。でも、来年あたりはもう卒業かもしれない。

 

最近息子が (そして私も) 気に入ってよく流している Bénabar という歌手のアルバムに、「moins vite ! (もっとゆっくりでいいよ)」 というリフレインが繰り返す、小さい人たちに向けた曲がある。私はそれを耳にしながら、まさに今がその時だなと思ったりしている。はやく大きくなあれ!と、ひたすら思っていたのに、この頃、もう暫くそのままかわいい子供でいてくれていいのよ と思い始めるようになった。そのうち薄らヒゲなんか生やし始めて、声変わりなんかしちゃって、ポケットに両手を突っ込んだ格好で上から見下ろされたりするのかしらと思うと、まさに「モワン・ヴィット! (moins vite) 」なのだ。 

 

夜はさっそくおうちで映画鑑賞。

息子が Viana を選んだ。ポリネシアのお話。夏らしいグッドチョイスだ。ムービーノートの地図のページで、ポリネシアの位置を一緒に確認する。ついでにちょっぴりくらいお勉強もしてもらおうというママンの思惑。息子は嬉々として乗ってきた。そもそも、お勉強なんてものはこんな風に楽しくなくちゃね。

 

Viana を観ていて、心に残った言葉がいくつかある。それは、destin (運命、使命) と incarnation (輪廻転生)。それから、ancêtre (祖先)。

 

そんなものがあるのか知らないけれど、この世に生まれた自分の使命はなんだろう?と考えることって貴重だなと思った。自分が何に向いているのか知ることは大切だ。もしかしたら、生きとし生けるものはみんな何かのために選ばれて生まれてきているのかも知れない。自分が何によって選ばれているのかを感じて、それを信じる。そういう生き方をしたいものだ。

 

ヴァイアナの場合、彼女の使命は海に生きること。海に選ばれた身であると自覚して、航海の民を祖先に持つ島の人達を、再び無事に海に戻すこと。島を危機から救うこと。ヴァイアナが自信を無くして挫けそうになった時、この世を去った彼女の祖先がその味方をしてピンチを乗り切る。素敵な話ではないか。

 

彼女のおばあさんが、その予言通りにマンタに輪廻転生する場面、ヴァイアナの船の上に再び姿を現すシーンは思わず泣けてしまった。この世の中の全てのものは永遠に生きている 死さえも生きている という、どこかで読んだ言葉を思い出した。もしかしたら、魂は消えないのかも知れない。

 

おつむの悪いペットの雄鶏が、ここぞという時に役立つのも良かった。きっと命にはみんな意味があるのに違いない。

 

半神半人で巨体のマウイが、ちっぽけな人間の女の子ヴァイアナの前で、逞ましく、それでいてちょっぴり情け無いところも良い。女性が強く、男性が情に脆い。世の中はそれくらいの力関係の方がバランスがいいのだと思う。

 

心を無くし、ドロドロの赤いマグマを吹いて怒り狂っていた島が、再び緑の息を吹き返すシーンは夢があった。緑の巨大な女神が海に静かに横たわり、それが島になるというのも美しい。

 

「ディズニーアニメは商業用映画」という先入観があったけれど、息子と一緒に、どうしてなかなか楽しめた。その上、エメラルドグリーンの海、白い砂、椰子の木、小麦色の肌の陽気な人々、そんなものを見ていて、すっかり南の島に行きたくなってしまったというオマケ付きだ。いつか母と旅行したハワイを、夢のようにぼんやり思い出したりした。