Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Chanson d’Hélène

ラジオでエレーヌのシャンソンという曲を初めて耳にした。

 

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歌っていたのはロミー・シュナイダー。歌声まで麗しい人であったとは。物悲しく美しいメロディーに乗って感傷的なリフレインがゆっくりと、語りかけるように響く。

Tu ne m'aimes plus

あなたはもう私を愛してはくれない

 

以前の私だったらこんなにセンチメンタルな曲は苦手だったかもしれない。恋の悲しみなんて現実的にも疑似的にも久しく経験していない今だからこそなのか、悲しみというのは清らで美しいものだなと思った。

 

しとしと雨降りの今日は、夕方、好きな文筆家の女性の1人がパリのとある書店でサイン会を行うと聞いていた。ちょうどもうすぐ私の誕生日だから、一冊自分にサイン入りの本をプレゼントするのもいいなと思ったけれど、ペンを片手に「お名前は?」と顔を上げる彼女にどんなふうに短く自己紹介しようかなんて想いを巡らせてみたけれど、息子を学校に迎えに行き、その足で買い物を済ませた後そのまま夕飯の支度を整え、宿題を手伝い、そうこうしているうちにまたいつものように日が沈み、家から遠いその書店にはとても足を運べなかった。黄昏時のママンは忙しい。

 

いつものように今日も人っ子ひとり車一台通らない物静かな夜になり、バルコニーの布製の庇に時々思い出したようにぽたんぽたんと落ちる雨粒の音だけが淋し気だ。

あと何年したら私は遠くに行けるかな。その時には、短い自己紹介もうんと上手になっているのかな。会いたい人達には会えるうちに会っておきたいと思うけれど。