Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Éclipse invisible

座る暇もないほど雑事に忙しい1日。

 

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その上、息子が学校から持ち帰った連絡帳の不可解な一言が引っ掛かり、なにやら胸がざわざわして落ち着かない。そういう日もある。

 

今夜は皆既月食だから見るとよい と父が言う。朝のリレーならぬ、夜のリレー。東京で父が見たその月を、パリで受け取れるだろうか。

 

夕暮れ時、西の空はハッとするような薔薇色に染まった。さざ波が寄せる浅瀬の海が空に広がっているようで美しい。キッチンの窓から、刻一刻と変化するその色合いに暫く見惚れた。恋焦がれているような切ないピンクに、所々ラベンダーの差し色まで入っている。

 

夜はバルコニーに出て何度も空を窺う。残念ながら月は雲に隠れて見えない。皆既月食どころか星一つ見えない。がっかりしたと同時に、ふと気が付いた。昼間の胸のザワつきは、連絡帳なんかのせいではなく、今夜の特別な月のせいではなかったか?きっとそうだ。雲の上の月が呼んでいたのだ。

 

母がこの世を去ってから、私も父も申し合わせたように月に敏感になった。母は月が好きだったから、竹取物語のかぐや姫のように、あの日はただ月に帰っただけなのかも知れないと思う。

 

薔薇色の夕焼けと、見えない月の力。

そういうものに影響されて、今夜は不思議な夢を見そうな気がする。