外は長雨。今度こそ、すっかり秋。
家に帰って買い物籠を降ろし、中から野菜くだものを取り出して、表の長雨よろしく流しでみんな洗ってしまう。
いちじく、黒ぶどう、茄子。紫の季節。
この深い色は、夏の間お日様をいっぱい浴びた証拠なのだ。太陽の光は、草を緑に、実を紫に、人の心を金色や薔薇色にするんだなと思った。
普段、洗った野菜くだものは、バスケットに入れて乾かした後冷蔵庫にしまうのだけれど、すっかり涼しくなったのでもうその必要もない。
内側に美しい色を秘めた瑪瑙石のようなイチジクは、薄い輪切りにして緑のサラダの上に飾って頂く。これには息子も喜ぶ。火にかけた鍋の様子などを窺いに、ちょっと台所に行って席を外す度に、気のせいか私のお皿の上の輪切りがひとつづつ消えていく。摩訶不思議イチジク。
この果実の季節になると、子供の頃母に読んでもらった「プラテーロと私」を思い出す。プラテーロというのはロバの名前。記憶違いでなければ、アンダルシアの晩夏にイチジクやザクロの実る詩的な情景描写があったように思う。母の気に入りの一冊だった。
大人になった今、もう一度読んでみたい本だ。まだあるかしら、実家の本棚に。