Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le petit concert

パリの5月の夜8時はまだ明るい。

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窓辺に人々が姿を現し、しばし街中に拍手喝采が巻き起こる時間だ。

 

ロックダウンが功を奏し、病院のベッドを必要とする感染患者数はようやく半減したけれど、医療に携わる人達の闘いはまだまだ続く。8時の拍手喝采はそうした方々にエールを送るひと時なのだ。

 

今夜は、8時ぴったりに、お向かいに住む7歳のマリオンもバルコニーに飛び出してきた。ヴァイオリンを片手に持っている。ポーズを取り、そっと弓を当てて、人々の拍手に添えて緩やかなメロディーを奏で始めた。やがて街の拍手が鳴り止んでも、マリオンのメヌエットは続く。黄昏時の空に弦の伸びやかな音が心地よく広がる。

彼女が演奏を終えた途端、近所のあちらこちらの窓から、耳を傾けていた隣人たちの拍手とブラボーが再び響いた。心温まる幸せな光景だった。

 

マリオンの表情はよく見えなかったけれど、きっとうんと嬉しそうな顔をしたに違いない。少し照れた様子で、飛び出してきた時と同じ勢いでぴょこんと部屋に引っ込んだ。

今夜の小さなお披露目コンサートのことは、彼女が大人になっても、きっと、ずっと覚えているに違いない。

 

マリオンのママン、ヴェロニックに携帯からブラボーのSMSを送る。すると、ここ数週間のパパとの集中レッスンの成果よ!との返事が届いた。退屈なお篭り生活の間に腕を磨いていた訳だ。

 

この世に幸せな子供たちがいる限り、きっと未来は明るいと思った。