窓辺のソファーで本を読もうとしていた。
ようやく1日の終わり。自分へのご褒美の時間。
ミントとローズマリーのお茶を淹れてローテーブルの上に置き、顔を上げると、窓の外の西南の空にチカチカ瞬く大きな星が見えた。バルコニーに出て空を見上げる。その明るい星は、冬の大三角形の一つ、シリウスのようだ。果たしていつもこんなに瞬いていただろうか?今夜は身が引き締まるほど冷えるので、星も凍てついてあんなに輝くのだろうか?信号でも送っているように、まるで点滅しているかのような輝き具合だ。
振り返ると反対側の空にはまん丸の月が出ていた。今夜のシリウスは、月明かりを反射してこんなに瞬いているのだろうか。
今私の目に届いているこの光は、あの星がいつ発した光なのだろう?何百年前、あるいは何千年前の光なのか?どうして今夜はあんなにチカチカ光っているのかしら?
昔の人達が天体に様々なメッセージを読み取ろうとした気持ちは、科学の発展した現代に生きる私にもよく分かる。今夜の星のミステリアスな輝きなどは、いかにも何か言いたそうにしているように見えるもの。
手にしていた小説を傍に置いて、息子の本棚にあった星の絵本と、私の本棚で埃を被っていたギリシャ神話とを取り出す。今夜はこれを少しだけめくってから寝ることにしよう。