Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Les garçons

5月は一番好きな月。

 

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今年は雨がよく降るけれど、それでもメ ( Mai ) は夏への期待が昂まって、どうしたって気分は明るい。人々の頭がヴァカンスのことで一杯になり始める月だ。やがて6月にも入ると、パリの人々は心ここにあらずになる。体に先行して心がヴァカンスに出てしまうから、仕事の速度などはすこぶる落ちる。ちなみに、フランスは来月初旬に外出制限やあらゆる閉鎖が一旦解除される予定だ。去年とほとんど同じシナリオ。

 

月曜はキリスト教の祝日だったので、家でゆっくり過ごした。

息子に洗濯物を干すのを手伝わせながら、彼の好きな子供用ラジオ番組 Salut Info を流していると、かわいい男の子の声でこんなジョークが聞こえてきた。

 

「スターウォーズのダークヴァドールは、パン屋で何を注文するでしょう?」

( かの Darth Vader ダースベイダーのことを、フランス語では Dark Vador と呼ぶ。)

 

おどろおどろしいダークヴァドールがパン屋に行く時点で、既にとっても微笑ましい。

なにを注文するんだろう?考えるけれど思いつかない。

 

「答えは、パンを3つとタルトタタン2つ!

どうしてかって?

(ここで、ダークサイドのBGMをバックに、男の子が声高らかに歌う)

パーン パーン パーン 

タータタン タータタン!」

 

これには思わず声をあげて笑ってしまった。子供の発想は面白い。今後、あの喘息気味の黒いアンチヒーローの姿を見る度に、思い出して笑ってしまいそうだ。怖い顔してカッコつけてるクセに、タルトタタンを欲張って2つも注文してしまうのだから!

 

午後は息子の友達が遊びに来た。雨が降ったり止んだりなので、特別にゲームの日とした。我が家では初めてのこと。

パソコンの前に陣取ったやんちゃなボーイズは、流行りの Fortnite という対戦ゲームで盛り上がっている。戦いの轟音と共に、楽しそうに会話しているのが聞こえるので耳を傾けると、「えー!どうしてボクを殺したの?」(Pourquoi tu m'as tué ?) と叫んでいる。殺された人はもう話せないのよ と思いながら、シュールな会話に苦笑した。

 

くだものを切ってお皿に盛り、テーブルに出して声をかけてもなかなか食べに来ない。いつもはオヤツと聞けば一目散に飛んでくる息子なのに、今日はすっかりゲームに夢中だ。何がそんなに面白いんだか。

せっかくやっとテーブルに着いたと思ったら、バナナもブルーベリーも苺も2人揃って無言でパクパク忙しく口に放り込み、パソコンの前にまたすっ飛んで戻る。我が家は普段息子にパソコン(ゲーム) をあまり許可しないので、このチャンスを一瞬たりとも逃したくないようだ。

 

私が小学生の頃、父がパソコンでオセロをやらせてくれた。本物のオセロのボードも持っているのに と思いながら、数回試したっきり飽きてしまって取り付かなかった私だけれど、息子は逆に画面であれば何でも飛び付く。普段はろくに興味の無いものだって、それがデジタルになった途端に食い入るので不思議だ。私とは全然別の生き物なんだなぁとつくづく思いながら、後ろ姿を見る。

相変わらずトーンの高い黄色い声で話すちっちゃな彼は、まだ「可愛らしい」の域を超えない男の子だ。それでもこの頃、よくよく見ると、ツルツルだった顔の鼻の下にうっすら生毛が生えてきた。

大きくなるのが待ち遠しいような、少し寂しいような。