Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Retour à Paris automnal

パリの夏は、ある日唐突にドアをパタンと閉じて去ってしまう。振り返りもせず、後ろ髪引かれることもなく。

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夏休みも残すところ3日という日、南仏を後にそんなパリに戻った。

3週間の滞在中、南仏ではとうとう一度も雨が降らなかったけれど、車でパリに北上する途中でパラパラ降り出し、道程の真ん中に位置するリヨンに差し掛かった頃、ワイパーを最高速にしても前が見えないほどの大雨に見舞われた。気温も、30度台から一気に10度台に急降下だ。雨のトンネルを抜けるとそこは秋だった。南から北への移動は、夏から秋への旅でもある。秋は雨が多いから嫌いだと運転席の夫が呟く。「秋晴れ」という言葉はこちらにはないようだ。

 

アパルトマンに戻って最初に確かめたのは、バルコニーの植物たち。なんとか無事だった。

マンゴーの芽は大きくこそなっていないけれど、双葉の緑が濃く、たくましくなっていた。イチゴは葉っぱが殆どナメクジに食べられてしまっていたけれど、ちゃんと生き残っていた。インゲン豆は蔓が伸びて、一つだけだけれど小さな蕾も付けた。新たに、カボチャの種とサツマイモのしっぽも芽を出していた。全て、春に台所の不要物をせっせと埋めた産物だ。あれやこれやの種をごちゃ混ぜに埋めた植木鉢は、色んな芽が飛び出してサラダボールのようになっていた。なんて頼もしい生命力。

 

トランクを広げて中身を片付け、今日と明日は洗濯デーになりそうだ。20分もあれば洗濯物がパリパリに乾く南仏と違って、雨が降ったり止んだりのグレーなパリでは時間がかかりそうだけれど。肌寒いので、そろそろセーターやカーディガンも出さなくては。

 

9月は1日から息子の新学期。今年の夏休みは、ロックダウンの反動で、ちっとも勉強らしいことをさせなかったから、ママンとしては少し気が重い。毎日マスクを2枚持参して登校するようにと学校からのメールが届く。数日前から、パリは屋外でもマスク着用が義務付けられた。呑気なヴァカンスに終止符だ。

 

それにしても、9月のカレンダーもまだめくっていないというのに、夏の気配は何処へやら。この、手のひらを返すような季節の転換はパリの得意とする手品だ。乾燥した空気も手伝って、名残りというものがおよそない。名残りというのは概して裏寂しいものだけれど、それがないのもまた物悲しい。エテ (été / 夏) という名の恋人が、トランクに一切合切をまとめて、なんの未練もなく突然出て行ってしまったのだ。

 

夕方、空っぽの冷蔵庫の中身を補充すべく、買い物に出た。野菜や果物の棚にも秋が訪れていた。今日の夕ご飯はカボチャのリゾットにしようかしら。仕上げにシナモンをたっぷりかけて。新しい恋人の名はオトンヌ (automne / 秋)。読書好きの食いしん坊だ。