Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Antidote à la grisaille

黄色の効能

 

f:id:Mihoy:20230120183057j:image

 

冬の朝。パリの空には太陽がない。

朝になってもまだ夜で、優柔不断な昼間は短く、夕方はたちまち夜になり、夜はやっぱり夜だから、来る日もくる日も、ぶ厚い食パンに挟まれた具の少ないサンドウィッチのような印象の薄い日々が続く。

昨日の夕方、ほんの一瞬雪が降った。すぐに止んで、いつものグレーに掻き消されてしまったけれど。

 

そんな灰色の冬の朝ごはんには、熱々の茹でたて半熟卵がピッタリだ。温かく、柔らかく、真ん中が鮮やかに黄色い。最初にスプーンの先で殻を軽く叩いてノックするのも、ちょっとした会話をしているようで楽しい。ゆらゆら立ち昇る湯気も幸せだ。私の場合、4つくらいはペロリと平らげてしまう。表が寒ければ寒いほど、空の灰色が濃ければ濃いほど、茹で卵指数が上がる仕組みだ。

 

紅茶にはクレモンティーヌ(みかん)の皮を刻んで入れる。パーッと広がる香りがよい。金色のはちみつをたっぷり掬ってひと匙。クローブをひとつかふたつ、シナモンもひとつまみ加える。体が温まる。

 

それから、今朝も窓の外のグレーの世界をぼんやりと眺めながら、まだ眠い頭で一日の予定を考える。

そうだ、今日はミモザのブーケを買って部屋に飾ろう。それはいい考えだ。その明るい黄色を想像したら、それだけで少し目が覚めた。

 

黄色い食べ物、黄色い香りのお茶、黄色い花。黄色はパリの冬のヴィタミン剤。グレーの効果的な解消策なのだ。

 

来る日曜は旧正月の日に当たる。それまでに家の大片付けを済ませたい。上の階からは、子供たちを学校に送った隣人イザベルが床に掃除機をかけている音がする。さあ、今日も元気に一日のスタートだ。