Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Coffee shop

天気の良い土曜の朝。

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ベルサイユの街に用事があって出かけ(低層の建物の並ぶチャーミングな街だ)、待ち時間があったので、偶然目に入った coffee shop (カフェではなくて)の看板を掲げた店に入る。私はマッチャラテ(最近よくカフェで見かけるようになった)、夫はコーヒー(カフェではなく)とケイク(ガトーではなく)を注文する。テーブルが5つほどのこじんまりした店内は、ほどよく賑わっていて、私の背後に陣を取っていた若い女の子2人が英語でお喋りしているのが聞こえる。ここに来てどうして英語だらけなのか分からないけれど。

 

ベルサイユという街は、その名が及ぼす影響で色眼鏡がかかるせいか、車から降り立った途端に城下町の空気を感じた。何がそう感じさせるのかはよく判断できない。でも、街全体が、王族が宮殿に暮らしていた時代の記憶をしっかり宿しているような気がする。

 

さて。夫という人は、出会った当初から、一緒にカフェやレストランに入ると、すぐさま新聞や雑誌を出してきて、向かいの席の私の顔を見まいとでもしているように、あるいは自分の顔を見せまいとでもするように、店内を観察することなどもなく、すぐ様それを広げて読みはじめる人だ。昔はそれを変えられないのかしら と思ったりしたものだが、ゆっくり本を読む時間が滅多に得られない今の私にとっては、逆にそれが都合がよいくらいだ。

昔、シャンゼリゼにほど近い演劇学校に通っていた頃、熱血教師のセバスチャンは、カフェで向かい合って言葉もなく互いに新聞を広げているようなカップルにだけはなりたくないね と、彼にとっての恋愛観を語っていたけれど、私たちは正にセバスチャンがなりたくないタイプの夫婦だろうな と思うと何だか可笑しい。

実はかくいう私も、当時は彼のように思っていた一人であったけれど。

 

家から持ってきた本を鞄から出す。先日購入したばかりの、シャトーブリアンにまつわる現代小説だ。ポケットにシリングが一枚もない という件から始まる。舞台はイギリスだ。

 

夫はと言うと、読み物の代わりに出してきた携帯電話から目を離さず、日本で行われているラグビーの試合を追っている。白熱の、ガール対イギリス戦なのだとか。イギリスがリードしてるぞ!また点を入れたぞ!などと時々言ってくる(独りごちる)ので、こちらは今本を読んでいるのでいちいち報告してくださらなくとも結構です と、今日は逆に私がわざと慇懃無礼に頼む。(いつもは、話は要点だけにして、あとは端折るように言ってくる彼である。)

 

それにしても、

不思議とイギリスとご縁があるこの頃だ。