Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Le dessert à la cour de Louis XIV

午後。美味しい紅茶と素朴なガトーを頂いた。

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パリのとある小さなサロン・ド・テで、「ルイ14世とグルマンディーズ」というようなお題目のコンフェフォンスがあった。

一杯のお茶や濃厚なショコラショに、当時宮廷で好まれていたガトーを添えて楽しみながら、語り手の話に耳を傾ける といった魅力的な趣向だ。

食後にデザート という習慣は、ここフランスが発祥の地。ルイ14世統治下の王宮で生まれたのだとか。イタリアからお嫁入りしたカトリーヌ・ド・メディチスはメレンゲやアイスクリームをフランスの王宮に持ち込んだし、それ以前も甘いものを頂くことはあったけれど、食後に摂るというお決まりのスタイルはそれまでなかったそうだ。

太陽王の妃、マリー・テレーズ・ドートリッシュはショコラ・ショに目がなく、この異国情緒漂う熱く濃厚な飲み物を、1日に4、5杯は召していたとか。当時のお菓子の香り付けには、コリアンダーやアニスが好んで使われていたそうで、それをふんだんに練り込んだビスキュイ・ド・レンヌ(女王のビスケット)を頂いた。そんな立派な名を冠するにしては、時代がら、極めて素朴な薄焼きクッキーである。

 

お砂糖の甘さがあまり得意ではない私だけれど、甘味料やカカオが贅沢品として珍重されていた時代に想いを馳せながら、ビスケットを味わい、残りのお菓子は包んで持ち帰った。

 

そういえば、いつかパリの骨董市で、銀製の珍しいスプーンを見かけた。持ち手は美しい曲線を描いていて、匙の部分が広く、そこに米粒大の透かし穴がいくつも空いていて、まるで銀製のレースのような優雅な風采のスプーンだ。茶漉しとして使うのかしらと思ったら、店のマダムが、デザートの苺などに砂糖を振りかけるための専用スプーンなのだと教えてくれた。白くてキラキラしたシュクル(砂糖)が珍しくとても貴重だった時代の、ちょっと気取った演出道具なのだ。

ひとつ購入して帰り、時々ティータイムに茶漉し替わりに使って楽しんでいたけれど、しばらく経つと空気に触れて変色しまった。やはり、執事やお女中さんを雇っていた当時の優雅な貴族のようにはいかない。お手入れが面倒なので、今ではキッチンの引き出しの奥に眠っている。いつか歳をとって、ゆっくり過ごせる時間がたっぷりできたら、しかるべきお手入れも施して、仲良しの女友達とのお茶の時間に登場させようと思っている。

 

ルイ14世といえば、当時のロワイヤルファミリーにしては大変珍しく、幼少時代を実の母親に育たれた王である。ママンの愛情をたっぷり受けて育った人物。王の中の王となり得た秘訣は、そこにあるのではないかしら。そんな訳で、私の贔屓の王様なのだ。

 

コンフェランスの話の中で、彼の青春時代は la tarte à la crème (クリームタルト)でありました という言い回しが耳に残った。甘いガトーに甘いショコラ。その上、耳にも甘い言葉。甘いもの三昧の午後でありました。