Ma boîte à bijoux 日々のビジュー

パリでの日々、思ったこと

Suis trop contente pour lui !

夜、洗濯物をたたみながらテレビをつけた。

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21時。TF2チャンネルで、今日から始まったらしい新しいドラマを放映していた。

靴下のペアを探し、シャツをたたみ、シーツをたたみ、何気なくテレビ画面に目をやると、ふと、なんだか見たことのある顔がブラウン管に映っている。

 

!!!

 

10年ちょっと前、テアトル・シャイヨの夜の演劇学校で一緒に肩を並べていた仲間の1人、Aだ。彼がドラマに出ているのである。エキストラなんぞではない。一端の役で!

 

Je suis trop contente pour toi !! 

 

最後に会ったのはいつだろう?

演劇学校を出た後、確か2度会った。一度はマビヨン (Mabilon) の駅前のカフェで。なにか渡すものがあって、会ってお茶したような気がする。その時はまだ私も演劇でドカーンと打ち上げるぞと息巻いていた頃だった。Aはゲイであるらしいと仲間内では囁かれていたけれど、真相はハッキリしなかった。目の前のこの黒人の男の子はゲイなのだろうか?そうかも知れないな と思いながらお茶したのを覚えている。だいたい、演劇仲間の男の子達といえば、ゲイの比率が高かった。

 

二度目に会ったのは、もっとずっと後になってから。陶磁器市場のようなマイナーなイベントに足を運ぶべく、普段はあまり縁のないペールラシェーズあたりの大通りをスタスタ歩いていたら、向かい側から歩いて来たのが彼だった。全くの偶然だった。

お互い急いでいたので立ち止まらず、すれ違いざまに手を振って、大声で最小限の会話をした。Salut ! 奇遇だね!元気?演劇続けてるの?頑張ってね!Chiao ! と、遠ざかりながら人ごとのようにエールを送った気がする。

かたやの私はその間に、結婚し、子供が生まれ、他の国に移住し、またフランスに戻り、母を亡くし、演劇についてはすっかり徹底して観客席にまわるようになっていた。

彼は私がそうしている間も、ずっと舞台に登り続けてきたのだろう。

 

 Franchement contente pour lui !!!

 

それに引き換え、私はすっかり洗濯カアチャンになっている。Aの姿に元気を貰って、ここらで一丁またドカーンを狙ってみるかな?